黒海の歴史

 読み終わって、主旨が解りました。

黒海の歴史――ユーラシア地政学の要諦における文明世界 (世界歴史叢書)

黒海の歴史――ユーラシア地政学の要諦における文明世界 (世界歴史叢書)

 複数の国が沿岸にある最小の海、と言ってもいいのではないでしょうか?古来より強力な国家が周辺に存在しましたが、その全周を支配した勢力は・・・一時期のモンゴル帝国ぐらい?その時期だけ陸路交易路である『シルクロード』は安定します。まぁ一時だけなんですけれども。
 あとは、中世までは北部は遊牧民、南岸はギリシア系からトルコが、そして近代からは北部はロシア勢力が支配し、絶えずせめぎ合いを続けています。
 あと遊牧民、あるいは海洋交易民であるギリシア、いわゆる定住者とせめぎ合い、交流し合いながら存在した地域であるので、色んな言語、色んな宗教、色んな人種が入り混じっており、近代のナショナリズムの時代には、強制追放、虐殺などの悲劇がホロコーストに先行、そして第二次大戦が終わった後も繰り返されています。
 民族浄化のおぞましい行為が幾度となく繰り返され、今でこそあまりニュースが聞こえてきませんが、つい数年前までは紛争やテロリズムが日本でも報道されていました。今もクルド人国民国家を求めてトルコ、イラク、シリア国境で合法、非合法の活動をしています。
 黒海以外の海はある程度の広さと浄化能力があるので、沿岸部を除けば工業による汚染は目立たないものになりますが、そもそも黒海は外海との水の循環がボスポラス・ダーダネルス海峡のみで、深いところは生き物が住みにくい低酸素水。つまり浄化能力が高くない。
 その汚染に加えて乱獲による漁獲高の衰退、と、環境問題が深刻化しました。今は解りませんが数年前は景気の減退、そして住む人の減少によって環境が改善されているそうです。皮肉な事に。
 古代は交通の要路、現代は辺境と化してしまい、つまり能力のある意欲のある人間は、強制退去の結果、アメリカや西欧に移住せざるを得ず、それでも何とか成功した親族などを頼ってニューヨーク、ロンドン、ベルリンなど、つまり現代の都市部に移住していってしまいます。日本国内の過疎化問題が、地域丸ごとで起こっているようです。
 だからどうだ、なんですが、なんかね、こういうのを知りたいと思うし、知っておくべきだと思うのですよ、はい。