読み終えラッシュ

 読み終えた本が一気にきましたので、書きます。はい。

 久しぶりにビザンツ帝国絡みの論文を読みました。どんどん深化しているなぁ。一昔前はビザンツ帝国の衰退は中央の文官と地方の武将の対立で説明される事が多かったのですが、この本では、皇帝が中央での支持を取り付ける為に大盤振る舞いし、政権は安定するけれども地方防衛に回す予算が削られて、イスラム・トルコ勢力の攻勢に耐え切れなくなり、守ってくれないビザンツに属するよりも攻撃してくるトルコにごめんなさいして、その傘下に入った方が被害が少なくなる、という判断で小アジアが切り崩されていったこと。
 これに反発して地方貴族が中央に反乱を起こすも、首都コンスタンチノープルを攻め落とし『同族殺し』の汚名をきる事を嫌い、首都と政治勢力が呼応した場合は反乱成功。拒否されると失敗という例が繰り返され、ところが首都の政治勢力が「俺たちのおかげで政権とれたぢゃん。さぁ利権よこせよ」と行ってくると利権を渡さないと政権が安定せず、結局地方防衛が疎かになり・・・という悪循環が繰り返されます。
 百年の安定期を築いたコムネノス朝は首都政治勢力の助けを得ず、つまりコンスタンチノープルを攻め落として政権を握ったので首都に阿る必要がなく、というか虐殺してもごめんと言わなかったという・・・すげいな。
 それまでのビザンツ宮廷は宮廷席次によって秩序を得ていましたが、コムネノス朝は皇帝、皇族との血縁、親疎によって席次が高くなるという形式に。皇帝の能力が卓越したものならば、これによって帝国を維持できましたが、まぁ、そうそう同じ血統に能力のある人間が出る訳もなく、地方統治に赴いた皇帝下僚も世襲し地方に根付いていくと地方の利害を優先させ、首都に反旗を翻すという、同じパターンになりビザンツは衰退していきます。
 なんかね、東ローマの時代からこの国って、税金収奪マシーンって感じで、それを納税者に還元せず、中央に吸いあがていくイメージが強いのですよね。名称が同じでも古代ローマとは根本から違う国家であると、改めて思いましたよ。
 あ、もう一冊は明日に回します。