読了二冊

 昨日は漫画の新刊を買いに行けなかったので、一般向きの学術書二冊です。

渤海国とは何か (歴史文化ライブラリー)

渤海国とは何か (歴史文化ライブラリー)

 自国の歴史書を持たずに滅亡してしまい、他国の記録と遺跡でしか語られない国家というのは、だいたい『謎』とかになってしまいますが、だいたい中国の歴史でいうと中唐から五代十国前半期ぐらいの二百年間、中国東北部にあった国家『渤海国』は中国や北朝鮮、韓国の政治的な思惑もあり、各国で『帰属』が争われる・・・つまり一国史の範疇では語ったり定義する事が無理な国家でした。今も争われています。
 ま、日本はそこから距離をとって語るべきで、そもそも現在の『中国人』『韓国・朝鮮人』とは概念の異なる人々で構成されている集団だったので、何処の国の歴史に属するか、なんてナンセンスなんですけれども。
 古代の東北アジアにおいて中国王朝と互角の和戦を繰り返した強国高句麗の遺民を核に、周辺の狩猟、農耕部族を統合した形で成立したのが渤海であり、文化と、そして周辺国との交易を支持部族に分配する事で国家を維持していたようです。もちろん軍事的にもそれなりの実力があります。でなければ二百年も存続できない・・・
 しかしその滅亡は偶発的な、まぁ奇襲によるもので契丹族によるそれの後も遺民は反抗を繰り返したようです。それを制圧し、支配下に組み込む為に、契丹渤海の支配方式を発展解消したみたいな形です。
 歴史は突っ走った人々にとっては争奪の的なのですが、そういうのは不毛なので、距離をとってみる事が大切ですよね。 室町期から戦国時代の西国大名たちの、海外との繋がりを論じたもので、当時の日本の輸出品って海産物と銀だと思っていたのですが、硫黄も重要な品目だったのですねぇ。あと、中国、朝鮮だけでなく琉球カンボジア、シャムとも不定期ながら通交をしており、文章だけの記録ですが越前の朝倉氏も島津氏を仲介者として琉球との交易を試みて、あるいは行っていたようです・・・これ、もしかしてそれなりの権威と勢力を持っている海浜のある大名たちは、意外に熱心に、交易に関わろうとしていたのかも知れませんね、西国大名だけでなく。それだけ莫大な利益をもたらしたからですよねぇ。
 だからヨーロッパ人がやってきても『新たな交易相手』という事ですんなり受け入れたのかも知れません。