読み終わったから書きたかったので

 これです。読み終わったので。

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

 どーも、次巻が発売するタイミングになると図書館で借りられるようになるみたいです。さすが人気作家・・・
 んでギリシア人の短くも熱く燃えた時期のお話ですが、今回はアテネの極盛と衰退です。前半の主人公はペリクレス、後半は・・・自滅していくアテネそのもの・・・かな?
 民主政体でありながら、ただ一人の支配者みたいな言われ方をするペリクレスですが、何故この人が三十年という長期政権を維持できたかというと、有権者に「こういう方法もあるよ」と提示し選択させるという方式で、自らが政策を選択したのだと思わせ、尚且つ、その政策が成功していたからでしょうか。
 ご本人は政治的センスはぴか一でも、軍事としては「まぁまぁ」な実力しかない人だったので、そして経済大国アテネの覇権は平和にあると理解していたので、戦争を自ら引き起こすつもりはありませんでした。
 しかし、最終的なギリシア世界の破局につながるペロポネソス戦役は彼の開戦宣言より始まります。
 まぁ発端はアテネの覇権を憎むコリントとか、テーベとかがやらかして、アテネにかなわないから、もう一方の強国スパルタに泣きつき、一国平和主義のスパルタは、繁栄するアテネへの嫉妬・・・みたいなものから、正式な宣戦布告はしないけれども敵対する・・・みたいな。
 ペリクレスとしては、過熱したギリシア世界が冷静になれば和平につなげられると思い、その熱を吐き出させる為にお互い主力がぶつからない形での、つまりアテネ側もスパルタ側も後方攪乱、略奪行を繰り返して、頃合いをみての和睦を目論んでいたようです。計算が狂ったのは、その後方攪乱でアテネに逃げ込んだ人々から起こった疫病で自身が倒れたこと。
 そしてアテネにとっての不幸は、民主政体というものを理解して長期戦略を立てられる政治家を、これ以降得る事ができなかったということ。結果、扇動家に惑わされて世論は二転三転。その結果の敗北を繰り返し、結束を誇ったポリスへの市民の忠誠も、金で寝返る状況になり、たった一度の敗北で海軍消滅にとなって、アテネは力尽き、無条件降伏します。
 コリントとテーベの要求はアテネ男子の全滅と、女子供を奴隷として売り飛ばし、アテネも破壊して更地にするでしたが、スパルタの『武士の情け』、そしてかつてペルシアに対して防衛し全ギリシアを守ったアテネの功績を訴えて存続だけは認められます。でも、それ以外すべてを奪われて。
 民主制のダメなところが全て出た上での衰退。これ、現代の日本に置き換えると、すごく怖いですね。マスコミや〇主党政権時代の事を考えると、すごく怖い。そして〇主党の人たちは、あの失敗から何も学んでいないように見えるのも怖い。
 言論の自由は守られるべきだから、つまり情報に接した側の判断力がいかに重要なのか、という事を考えさせられる物語でした。
 それにしても・・・塩野さんの筆によるものだからなのか、こんなにアルキビアデスってデキる奴で、そして運がなかったのか。有能な無責任者というイメージだったけど、もし彼が企画したシチリア遠征を、彼自身が最後まで指揮していたら、また結果は変わったのかな?いや、何度も和平のタイミングを潰したのはアテネ市民だしな・・・やはり変わらないか。