香りは好きなものもある

 日本の赤葡萄酒って、あんまり香りが立たなくて味が軽いイメージがあって(そして甘い)、敬遠していたのですけれども、最近はそうでもないという噂を聞いて、スーパーで購入したのですよ。使用した葡萄の品種を眺める限り、自分にはないなーっと思ったのをあえて選んだのですが、意外に香りが立ち、口当たりは悪くなかったです。まぁ軽いのですが。 ただ昨夜は刺身デーでしてね、何故か父親が赤葡萄酒を用意するのですよ。何故か。生臭さが立ってしまうが仕方ない。他のおかずで飲もう、と思ったのですが、この軽さならばあるいは、と思って刺身を食べたと後に飲むと、意外に生臭さが気にならない(自分は)。
 もしかして日本の赤葡萄酒には、刺身でも飲めるように軽めにしているものがあるのですかね?考え過ぎかな・・・
 あ、さて、読み終わったものが溜まっているので、それを書きかき。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 こちらはイギリス人執事の話と聞いたので読んでみました。いいですね。戦間期から第二次大戦後まで、ある紳士にして貴族に仕え、完璧な執事を志し、そして良き執事であったという自負を持つ初老の男が主人公ですが、貴族は屋敷を手放し、今は購入したアメリカ人の下で務めていますが、細かいミスが目立つようになります。スタッフ不足という理由を自ら見つけ、たまたま以前屋敷で働いていた女中頭から手紙をもらい、更に屋敷を留守にするから気晴らしに自動車旅行でもしてきたまえ、車は貸すから、というアメリカ人主人の好意に甘えて、イングランドを旅する事になります。
 そして旅行きで過去を振り返り・・・ああ、不穏なものを感じる。職務を完璧にこなそうとして、感受性を殺している事が明白でして・・・ああ、ああ、やっぱり・・・というラスト。しかし、それを同じような職種を引退した男の言葉によって慰められます。前向きに生きなければならない。自分なんか引退してから方が元気がいいと。
 過ぎ去った過去、衰えた自分を嘆いても取り返す事はできない。あるがままを受け入れなければならない。主人公は涙を流しますが、静かな涙で、黄昏の場面、黄昏の英国と重なってゆったりとした感傷の波を呼び起こします。
 なるほど、これがノーベル文学賞作家の作品なんだ、と胸にきましたね。でもこれは、どっちかというとある程度加齢した人間の方が味わい深い作品かもしれません。
 ああ、他の作品は金曜日にでも書きます。