忘れられた巨人

 読みおえました。というか半分ぐらいは流し読みです。すみません。あんまり読みやすいとは思えなかったので。

 舞台は、皆大好きアーサー王時代少し下ったイングランド。主人公の一人アクセルは王に仕えていたらしい事が物語が進むにつれて判明するので。ブリテン人夫婦は人々が物忘れがひどくなり、臆病になり、年老いた自分たちに対する村人の冷たい態度にいたたまれなくなり、伸ばし伸ばしにしていた息子の元へ向かうという旅に出る事を決意します。
 その道中で、他の村でも、サクソン人の人々の間にも物忘れが流行り、人々は臆病になっている事を知ります。この旅の最中、それを解決する為に西から遣わされたサクソン人の戦士、村人から排斥されたサクソン人の少年、そしてブリテン人の老騎士と巡り合います。
 この状況に対する意見を、賢者と名高い修道士に尋ねる為に寄り道するのですが、そこでも疑心暗鬼の渦が巻き起こり、そしてブリテン人領主がサクソン人戦士に向かって追手をかけている事が判明します。そして忘却の原因が雌竜の吐息にあるという事も。
 サクソン人戦士は竜を倒すために旅をしているのですね。老夫婦、中でも奥さんの方は日に日に物忘れがひどくなり、息子の元にたどり着けるか危ぶむようになり、全ての原因が竜にあるならば、倒してくれるように依頼します。しかしブリテン人の老騎士は反対し、そして・・・という感じで物語が淡々と進みます。
 そして竜は、まぁ倒されてしまうのですが、その前後で老騎士のこと、戦士のこと、そして老夫婦、中でも息子の事が明るみになります。それはブリテン人とサクソン人の相克でもありました・・・
 ファンタジー作品と言っていいのですが、その諦観めいた記述が何とも言えぬ読後感を与えます。民族紛争というのは『国民』という概念、『民主主義』という理念が深まるほどに起こらざるを得ないものです。つまり現代になればなるほど業が深く争われていくものであり、それを解決するには、あらゆる意味での不平等を解消していかない限り不可能な事です。
 でも、それが本当に言いたいことかと言えば、そうとも思えず、全てを忘却してしまう幸福と不幸がそこにあり、そして全てを知る覚悟と責任が必要なのだと感じました。
 自分にとっては、この作品はそういうものです。
 さて、次は何を読もうかなぁ・・・