信長研究の最前線

 最近研究者の間では『革新』『天才』『南蛮好き』な信長像が徐々に修正されていますが、それを更に解明している本です、これ。

信長研究の最前線2 (歴史新書y)

信長研究の最前線2 (歴史新書y)

 期待していたのは浅井長政が何故信長を裏切ったのか、という事だったのですが、いつの間にやら同盟者から従属者にされていた事が不満だったようです。信長にしてみれば妹婿で一門扱いだったのでしょうが、同格の同盟者だと思っているから、格下扱いが頭にきた、と。・・・弱い?
 逆に言えば、それぐらいしか理由が思いつかない浅井長政の裏切り、とも言えます。
 次、正倉院宝物の『蘭奢待』切り取り。皇室御物なので天皇の許可が得られなければ入手できないものですが、管理しているのは東大寺でして、これは信長と東大寺の服属交渉の一環とも言えます。つまり「名香蘭奢待を切り取らせてくれたら、君んとこの領地問題、前向きに検討してあげるよ」というサイン。んで東大寺はそれに乗る、乗らざるを得なかったという事だったと。
 イエズス会に対して好意的だったという評価も、実は『禁制』を与えただけで、しかもイエズス会が求めてきたから与え、そして天皇が嫌だ、って言い始めたら「んぢゃ天皇がおっしゃるとおりに」と滞在許可が反故にされそうになり、ルイス・フロイスが慌ててとりなしをお願いしたという記事があります。イエズス会に対して好意的である、という記述は彼らの残した記録にしかなく、日本側にはない。つまり信長にとってはイエズス会だろうが、本願寺だろうが、東大寺だろうが、延暦寺だろうが、逆らえば敵対勢力、そうでなかったら保護対象の教団。それも相手が保護を求めてきたら対応する、ぐらいなものだったと。
 個人的には舶来もの好きだったようですがね。
 今回の本で自分が新たに知った事は、そんなところですかね。今後も研究が深化して、それが市民権を得ればなぁ、と思います。