良識とか公的機関がいいだすと・・・

 昨夜録画していたドキュメンタリー映画を見ました。

カンパイ! 世界が恋する日本酒 [DVD]

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 日本酒にまつわるドキュメンタリーですね。たぶんきっかけは、日本在住で日本酒の事を英語で講義しているアメリカ人の方からなんでしょうけれども。
 取り上げられているのは前述のアメリカ人の方、京都で杜氏をしていらっしゃるイギリス人の方、そして岩手の老舗造り酒屋の五代目だか六代目の方ですね。
 アメリカ人とイギリス人のお二方は同じ年に文部省のカリキュラムで英語を教えながら日本で過ごすプログラムに参加した事が、来日のきっかけ。それまで日本酒どころか日本語、日本に関すること、まったく無関係だったのですが、赴任地の学校関係者で日本酒スキーな日本人が同僚でいて、居酒屋の安酒とはまったく異なる次元の日本酒を飲んで、開眼したそうです。
 それで片方は日本酒の作り手に、片方は世界に発信することに。その勉強欲は凄まじく、東京で行われた四十七都道府県の造り酒屋の試飲会に出かけ、全ての酒を試しメモを取り、質問をしていく程です。
 題名にしたのはですね、岩手の造り酒屋さんの話でして、この方は小さな町の長く続いた家柄なので、名前を出せば、あそこの息子と誰もが知っている。それが嫌で、別の職につこうかと思っていたようです。簡単な英語が喋れる方なので、英語教師を志そうとした時もあったのでしょう。野球選手は趣味とは言っていたけど。んでアメリカに留学した時、ホームスティ先に実家の酒をお土産で持っていったら、ひどく喜ばれて「こんな旨い酒をつくっているなんて、すごいぞ」と毎晩のように言われて、んぢゃあ、そっちへ行くかな、と決めた人らしいです。
 東京農大で勉強して、新しい技術を導入するのにも苦労、売り込むのも苦労、自分の目指す酒が賞をとり、んで世代交代が進み、なんとか軌道にのった矢先に、東日本大震災が起こりました。
 販路の半分が東北、残りが大都市。しかし東北では酒は売れず(必需品から先に入手しなければならないから)、東京でも当時の石原都知事が自粛しろ、という。これでは自分たちの商売は立ち行かない。それで「東北のものを買ってくれる事が支援になる」「うちの日本酒を買ってくれ」という動画を流し反響を呼ぶことになります。
 これを当時知った時、あ、そうだ。そういう形でならば誰だって復興を支援する事ができる。自粛とかなんて、ただの自己満足ではないか?だいたい喪に服する思想って儒教だよな、あれ、格好つけの規則だもんな。
 生き延びる為には格好つけは二の次にしなければならない。何にも増して生きていく事が大切なのだから。
 もちろん格好つけというか、礼儀作法も品位を保つうえで大切な事ですが、それを行政が言い出すと、なんともうさん臭くなる。道徳とか、良識とか、そういうものは個人レベルの話にとどめておかないと、そんな範疇では考えられない現実というものは確かに存在するし、それを超えていかなければならないのが政治であり行政なのだから。
 なーんか、そんな事を思いつきましたね。