読み終ったものの中で
書くことが思いつかなかったのですが、再読しているうちに思いついたので。
- 作者: 鈴木将典
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2017/04/04
- メディア: 新書
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別にそれが主論ではなくて、今川時代から武田・徳川の争奪期に遠江の国人領主たちがいかに過ごしたかという事を論じています。ありていに言えば有利な方につく、なんですけど。
その中で気が付いたのですが、特徴的なのは今川時代の統治法で、古典的な『分割して統治せよ』を実践しています。ただしその構造は、同じ一族内で競合させるというもので、両者が今川氏に奉公する事を競争すれば、今川氏にとって好都合なのですが、ひとたび外部勢力と結びつくと、騒乱の火種となります。
同時代資料では、今川氏真という人物は暗愚というよりも剛毅と称される性格、能力の人で、決して今川氏の没落に手をこまねているような人物ではありませんでしたが、しかしその権力の崩壊を押しとどめる事はできませんでした。
理由として桶狭間の戦いで主要な幹部を失い屋台骨が動揺した事が挙げられますが、それ以外に、今川氏の統治法が主因ではないかと。同じ国人領主内で今川についている本家に対抗する為に分家が強力な対外勢力、武田や徳川につき、急速に領国支配が分解していく様が見れます。
今川氏没落の後、武田徳川の争奪戦が開始されると、どちらかが滅亡する結果になるまでの闘争のなります。その過程で国人領主は領主の資格を失い、大名家の家臣となっていく事になります。
ちなみに井伊直政は国人領主井伊家として徳川についたのではなく、最初から徳川に仕官しており、江戸時代に井伊家が領主家との系譜的つながりを意図的に作成し、その過程で宗家の井伊直虎を女性化して直政の養母と位置づけた、ともみられるそうです。