コミュ障か

 そういえば何も知らんな、と思って借りました。

近衛文麿 (人物叢書)

近衛文麿 (人物叢書)

 五摂家の筆頭とも言われる近衛家の嫡男として、様々な面で優遇されながら、彼自身は人々・・・日本に限らずアジア地域の人々の不平等を是正する事を志し、世襲族議員となる家業から知識人→政治家になった人です。
 その志向は欧米主導の体制を打破し、アジア地域の団結を訴えたものでした。アジアの大半が欧米の植民地になっている当時としては、まぁアジア人としては妥当な主張ですね・・・んが、その手法が「これってコミュ障だよね」というようなもの。だってね。中国にさ「おい、仲間になって欧米に対抗しようぜ。当然ボスは日本だ。あ、その為の経費はお前持ちな。当然だろ?」という事を軍事力という拳でやろうとする・・・まるでジャイ〇ン。
 とにかく自分の正義は振りかざすけど、ほとんど交渉の為の摺合せができないという・・・ご本人はそうしなければならないと思いつつも、しかし他人が自発的に納得して行わなければ、そうさせる事はできないという啓蒙主義な考え方でもある近衛は、積極的に働きかける事をしない政治家であり・・・つまりコミュ障に陥るという・・・
 不幸な事は、彼の考え方が『大正デモクラシー』では結構支持されており、つまり日本人自身の考え方であった訳で、自分たちの『正義』を押し付けるばかりで他人の『正義』とのすり合わせができず、戦争を解決できず、新たな戦争に突入していくという「僕は悪くない。理解してくれない・・・」と嘆いて破滅していく姿が戦中、敗戦の日本なのだなぁ、とつくづく感じました。
 そういった意味では、彼は昭和前期の代表的な政治家なのであったという事ですね・・・