基本ホラーなんだ

 推理物だと思っていましたよ。

Another

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 語り部たる主人公の男の子の語り口が結構冷静であるので、怪異の謎解きがなされてやっと、あ、そうなんだと気が付く始末。まぁ物理的に達成できない殺人がなんとなーく続くので、犯人なんていないんだろうなぁ、とぼんやり思っていましたが、やっぱりそうなんだー、と。
 ただ、不条理なんですが、恐怖とか、不快感とか(実はホラーものはその不条理故に読後に不快感を感じるタイプで、それを楽しむという変な事を時々する人間です)、そういうのは感じなかったです。主人公が一年限りの転校生、つまり『よそもの』であるせいなのか、死んでいくクラスメイトに対する感情が希薄なのか、連続殺人の印象が乾いています。まぁ事故死であり、病死であるし、実際に殺人の現場に主人公が居合わせる事が、ラストシーンを除いてほぼない。そしてラストにしても「あ、死んでもーた」と感じても特に悲しいとか苦しいとか感じなかったのが不思議です。
 途中からそういう態勢になってしまったから、身構えてしまったのかな?
 そうですね、もう少し犯人というか、元凶に対しての感情移入があったら・・・いや、あれ以上はおかしいかな、うーむ・・・面白かったけど、妙に読後感が軽い印象を受けました。
 実は著者の方の作品をちゃんと読むのは初めてな気がします。他の作品を読んだら、また印象が変わるかも知れませんね。