う、この設定は・・・

 しょっぱなの話をニコ動で読んで今更ながら気に入り、大人買いして読みました。んが・・・終盤のこの設定は・・・

 原作ではなく、マンガ版を大人買いってところがあれですが、原作のイラストを描いていらっしゃるtoi8さんって方は好きなんですけど・・・基本文庫版を買う人間なので!!(え
 んで、しょっぱなの人間対魔族の戦争の説明を経済的な視点でしていることが気に入りまして読み進めていたのですが・・・恐らく最後の盛り上がりだからなのでしょうが、人間側がマスケット銃で大量の銃兵を育成し、三十万になんなんとする大軍で魔界に攻め入ったというくだりで、おい!!とか思いました。
 まず、先遣隊が奇襲のような形で襲い掛かる描写があるのですが、大軍を用意しているという情報に接しながら、戦場に(南部連合と魔族が戦っていた)接近されるまで気が付かなかったとは・・・え?
 まぁそのあたりも相手の隠蔽工作が上手かったでいいでしょう(農奴マスケット銃を持たせた即席兵にしては、うますぎるが)、しかし魔界に三十万の兵で侵攻する件はいただけない。
 技術的、魔術的な描写がないという事は、中世の補給体制でやっている訳で、そんな貧弱な補給では二十万の兵を食わせる事は到底不可能です。
 圧勝と喧伝された豊臣秀吉の北条攻めですが、二十万を超える兵を動員して直面した危機は、兵士の食い扶持が足らないという事でした。箱根にある北条の最前線基地を攻める前から、兵士たちは芋を掘ったり、略奪したりと、自分たちで食い物を探さなければなりませんでした。その最前線基地は結果として一日で落としますが、日本の戦国期における攻城戦は開始数日で陥落させないと、長期戦に陥ります。豊臣がたとしては何としても速攻で落とす必要があり、部将の戦死もありながら陥落させています。その後主力で北条の本拠地、小田原城を囲みますが、並行して支城攻略の部隊を次々に送り出しています。これは敵の戦意を落とす事と、補給を分散させて、敵地で略奪させて兵を食わせるという二つの側面がありました。
 んで、『まおゆう』・・・三十万のうち十万は別行動ですが(これも補給不可能な兵数ですが)、二十万の兵は関門都市と呼ばれる城に張り付いたままです・・・大砲で城壁を崩すようにしていますが、十七世紀に登場した対大砲城壁を採用しているので、簡単には崩せません。んで、別働隊に補給を絶たせれば、時間とともに軍隊に飢えが広がり二十万の軍隊は瓦解します。
 なんで素人でもこういい切れるかというと、古代ローマの将軍が実際にやっているのですよ。ティベリウスという二代目の皇帝になった人ですが、バルカン半島で起こっただまし討ちみたいな反乱にローマ人が怒り、鎮圧する彼の下に二十万あまりの義勇兵が集まりました。しかしバルカン半島という山がちな、ローマ街道もそんなに通っていない時代です。ロジスティックで勝利するローマ軍でも、こんな人数の補給などできません。というか古代の技術では不可能です。で、彼のやった事は、精鋭の五万人を選抜して、残りは帰したのです。つまり、いかに補給体制が整っていようと、その時代での限度は五万人を食わせる事でした。
 ここんとこの説明が今のところありません。圧倒的、絶望的な敵を演出したかったのでしょうけれども、ええ、はっきりいって覚めました。あとは普通のふあんたじーとして読むだけです。ああ、もったいないなぁ・・・