武士という身分
武士というものの江戸時代における実態を調べた本・・・かな?
武士という身分―城下町萩の大名家臣団 (歴史文化ライブラリー)
- 作者: 森下徹
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2012/06/01
- メディア: 単行本
- クリック: 5回
- この商品を含むブログを見る
励みようがなく、収入につながらない仕事をやっていれば、まぁ腐朽していきますわな。
戦国期までの武士というものは、だいたい地域の有力者でした。当たり前です。武装するにも人数を集めるにも財力が必要です。実は武士と侍身分というのは厳密にいうと異なるものでして、武士は文字通り腕っぷしで仕えるものの事ですが、侍身分とは朝廷の位を持ち、皇族や公家などの貴人に奉仕する身分を持つものの事で、武士とは限らず文士というのも存在していました。官僚の原型みたいなものですね。
鎌倉時代になると軍事貴族化していく源氏将軍や北条氏に仕えたり、幕府の御家人となったりして武士化する文士もいますが(前述の毛利氏はもともと大江氏という文士でした)、江戸時代になると逆に武士が文士になったりしていきますネ。
話を戻して、武力を保持する。すなわち武装したり訓練したりしていける資力や収入があるという事で、飢饉などの天災や戦に敗れたりして財産を奪われる事がないかぎり(無能な当主とかもあるけど)武士が困窮没落する事はなかったと思います。まぁ平和というものがあんまりなく、自力救済で非武装なんて観念のない頃なのでアレなんですが。
恐らくこれは戦国時代になって大量の兵力を常時動員する体制が取られた事に関係があるかも知れません。それまでは臨時雇いだった足軽を常に雇い続け、彼らも武士の範囲に入れてしまい禄を保証しなければならなくなったと。
あんまり関係ないけど軍事国家という事では同じでも古代ローマと江戸時代日本の違いにも思いをはせてしまいます。古代ローマは武装し国を守る事が市民の権利であり義務で、だから退役という概念を持ちました。平和な生活をし職を持っていた市民なので、軍団兵を退役した後はその市民に戻るという訳。まぁだいたい軍団兵時代に身に着けた土木工事の仕事や、鍛冶屋、時には現役時代の知り合い相手の居酒屋、みたいな職種につく事が多かったようですが。非常時の武力という意識が浸透していたみたいです。
翻って日本の場合は武装する事が身分の証みたいな事になっていまして、この辺、中世ヨーロッパの騎士に近いかも。つまり非常時こそ常態という意識だと思うのですよ。それが江戸時代になって非常時が本当に非常時になってしまい、その武力を役立てる機会はなく、しかし軍事政権ゆえに武装せねばならず、そして役立たずになっていくという・・・それも江戸時代の武士の一面という事ですかね・・・