そろそろ固い本

 内容も装丁も・・・いや、内容はそれほど固いと感じなかったけど。

日本中世合戦史の研究

日本中世合戦史の研究

 主に鎌倉時代から南北朝内乱期の研究ですが、なかなか面白かったのが南北朝以前、鎌倉末期の六波羅探題が組織していた軍兵が、兵種別の編成を行っていたという事です。畿内、西国御家人だけでは悪化した治安を維持できなくなり(寺院門徒の強訴などに対処したり、悪党討伐をしたり)、その悪党自身を組織して兵力として使っていたという事です。悪党=後世の足軽と考えた方がいい存在ですが、つまり地主の武士だけでは足らなくなり、浮浪民を武装させて傭兵として使用していた、という事ですかね。
 地域的な格差はあるのかも知れませんが、兵種別編成が戦国時代ではなく鎌倉末期まで遡れるとは思いませんでした。日本中世の軍事史は、まだまだ未研究の分野なんですのぉ・・・
 また楠木正成の一族はもともと駿河出身の得宗被官人で、畿内に移り、そして六波羅探題の指揮下で反乱討伐に携わっていたのですが、その戦上手は既に広く伝え聞かれるところで、だからこそ彼が反旗を翻した時には六波羅はもとより幕府も驚愕したという。
 そして楠木正成は意外に教養人であり、どうも共通の高僧を通じて宋学の勉強会などで後醍醐天皇とつながりを持ったらしいのです。
 戦前は『皇国史観』のせいで、こういう研究はされませんでした。今も宮内庁が管理している古墳群を発掘調査する事は難しい現状です。皇室を文化として保存する事も大切ですが、そのルーツを研究し、一体、この国の歴史は何処まで遡れるのか、という事を明らかにする事も大事だと思いますがネ・・・つまり、古墳の発掘調査をしてくれよ、という事です。はい。