前にも読んだけど

 もっかい読みたくなったので借りました。

安芸武田氏 (中世武士選書)

安芸武田氏 (中世武士選書)

 たぶん三年ぐらい前に日記にも書いている気がするけど、まぁいいよね。
 はい、承久の乱とかの軍功でもらた恩賞で安芸守護になった甲斐武田氏ですが、惣領家はこの安芸守護職についた者になったようです。といっても族的結合はそれほど強くないようですけど。
 培っていく勢力圏はだいたい今の広島市域と重なるみたいですが、南北朝期に自力で安芸一国を従わせる事ができなかったように、戦国期に滅亡するまで、その支配力は部分的なものでした。しかも足利義教期に信任を得て若狭守護の一色氏を謀殺し、若狭守護になると、今度はそちらが惣領家になるという。
 戦国期のイメージからするともっとも強力なのは甲斐武田氏の方なのですが、中世の価値観からすると甲斐という国は、ドがつく田舎のようです。安芸は西国の海運を担い荘園が発達した国ですし、若狭も日本海海運の結節点であり、何よりも甲斐や安芸より京、つまり中央政界に近いので、こちらを本拠にした方が出世の機会がつかみやすいという。
 ただ戦国期になると様相は変わります。おそらく伊勢宗瑞の影響だと思いますけれども、そのやり方から学んだ武田信虎が甲斐一円を統一し強力な戦国大名に成長すると、大内氏との争いに消耗した安芸武田氏、小国であり中央の政局に巻き込まれて支配権を確立できなかった若狭武田氏がそれぞれ衰亡、滅亡していくと、あたかも基からの宗家は昔から甲斐武田氏なんだー!!という理解が広がっていきます。戦国時代のビッグネーム信玄くんの家だしネ。
 しかし、鎌倉、室町期の武士の価値観が垣間見えて、その歴史をたどるのは興味深い一族ですヨ。まぁ武田氏は苗字の地が常陸なのに、そこにまったくこだわらずに流刑先の甲斐で勢力を扶植したというしたたか者の一族なので、一所懸命よりも、与えられた環境にいかに適合していくか、という事を優先させた一族なのでしょうね。