春秋時代のうんちゃらかんちゃら

 昨日はアニメの話題でしたが、今日は一転してこんな感じ。

 数年前にお亡くなりになった古代中国の研究家の方の論文をまとめたものの第三集です。第一集と第二集はあんまり興味がわかなかったのですが、こちらは政治史という事でとっつきやすいと思いまして。
 記述は文献資料の『春秋左氏伝』の解釈が中心です。『春秋』という書物に注釈を加えた本で、ほかにも公羊伝とかありますが、儒教的解釈が酷いので左氏伝がもっぱら使われています。
 春秋時代というのは西周から東周中期ぐらいまで、中国の東部に存在した魯という国の歴史を中心につづった『春秋』という書物に描かれた時代、という意味で名づけられています。簡単にいうと群雄割拠なんですが、『春秋』には、そしてそれを元ネタにした歴史小説とかだと登場人物の善悪だけで個人の闘争に全て置き換えられているのですが、やはり研究者の方なので、それが当時の国際関係、列強との力関係、そして国内の貴族政の矛盾と闘争の説明がなされています。
 これで解った事は、最初の覇者斉の桓公を輩出した斉は、中国東部での勢力拡張を求めても、中原での勢力争いにはさほど積極的ではないこと。むしろ中原北部に位置する最強国晋と漢水より南で精強を誇った楚が、河南の中原諸国に対する影響力を相争い、しかも単純でない事にそれぞれの国の貴族勢力の綱引きまで加わって複雑な動きを見せている、ということ。
 これまでは西の強者秦、南の覇者楚、東の覇者斉、そして中原の覇者晋という感じで簡単に考えていたのですが、のちに中国を統一する秦が影響力を増すのは戦国時代に入り、最強の晋に魏韓趙に分裂し、しかも足並みがそろず相争うになってからなんですねー。
 ネタ的には新しいとは言えませんが視点が新鮮で面白かったですヨ。