読書三冊

 別に昨日のうちに読んだとか、そういうのではなく数日かけて図書館で借りた本を三冊読んだデスヨ。
 一つ目

巡洋艦インディアナポリス号の惨劇 (朝日文庫)

巡洋艦インディアナポリス号の惨劇 (朝日文庫)

 和書ぢゃなくて全てで出てきた。何故?
 それはさておき、巡洋艦インディアナポリス、まったく知りませんでしたが、第二次大戦で日本海軍が撃沈した最後の主要艦艇であり、実は原爆部品を運んできた極秘任務の後であり、そして旧型だけれども上層部に信頼されて旗艦を勤める事があるという軍艦でした。
 日本の潜水艦伊58に撃沈されたのは偶然のなせる技であり、まぁ不運としか言いようがないのですが(潜水艦艦長は自分がもっと早く発見してインディアナポリスを撃沈すれば原爆投下はなかったかも知れないと、苦しんだそうですが)、その後は海軍の慣例(予定通りに艦船が港につかなくても、まぁいいか、とやりすごす緩さ)とか担当者の怠慢(四日到着が遅れても頓着しなかったとか、SOSを日本軍の欺瞞工作と考えた)とか重なって、漂流する乗員九百名あまりは四日〜五日間鮫が徘徊する海に放置状態。
 容赦なく襲い掛かる鮫のネタは映画『ジョーズ』になったそうですヨ。
 しかし更に酷いのはある意味海難事故であるこの事件、海軍は艦長一人の責任にしてしまい、ほっかむり。艦長は退役後、戦死した乗組員の遺族からの非難に耐え切れなくなって自殺。彼の名誉が回復されたのは二十一世紀になってからでした。
 『艦これ』やっているせいか、ちょっと気になりました。将来アメリカ海軍の船とか実装されたら、まっさきに探しちゃうかもネ。
完全なる沈黙(ハヤカワ・ミステリ文庫)

完全なる沈黙(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 弁護士資格を持ちながら職を変えていった異色の作者(一応この作品発表時の本職は弁護士らしいけど)の初ミステリー。登場人物が多くて誰が主人公なんやねん、とか思うのですが、こういう群像劇風著述は向こうでは手法として確立しているようです。
 登場人物も魅力的だし、続編とかかけそうな内容だし、続きがあれば読みたいなぁ・・・とか思ったけれども、この本自体絶版ぽいよ?
 うーむ、残念。作者を投射したような元弁護士の警官とか、彼に憎からぬ感情を持っているロースクールの同窓生とのロマンスとか、続きが読みたかったのぉ・・・
「イタリア」誕生の物語 (講談社選書メチエ)

「イタリア」誕生の物語 (講談社選書メチエ)

 『チェーザレ・ボルジア あるいは華麗なる冷酷』とかを読んでいると、ルネサンス期からおぼろげにイタリアという国が存在していたように思えるのですが、とんでもないっす。実を言うと現在でも「イタリア」という国としてアイデンティティが確立されているとは言いがたいらしいです。
 その統一過程は明治維新直後の日本、その日本語訳から更に訳した韓国語、中国語訳がアジア諸国に出回り、影響を及ぼしたらしいのですが、イタリア統一の過程からして職人的な離れ業を行使しており、また統一の熱狂から醒めると慣習や習慣とは異なった統治が始まり、重税感、徴兵制という得たいの知れないものへの反感から騒然となります。
 その後は、日本のマンガで「ヘタリア」と呼ばれるような頼りない感じで現在まできています。
 まぁ北と南ではまったく違う国だともいうしネ。国としての統一感を得るのは、まだ先なのかも知れません。