神林長平作品

 何気に図書館にあったので借りてみました。

ぼくらは都市を愛していた

ぼくらは都市を愛していた

 神林さんの作品には癖があって、だいたい時間と空間が曖昧になり、混ざってしまって事件が起きるというパターンが多いように思うのですが、この作品もそう。どっかで読んだような気がするなぁとか思うけど、読んでいなかったとも思う。作品の中の登場人物のように曖昧な気分になりました。
 今回は双子の姉弟がキーパーソンになっていて、情報伝達が破壊されてしまった近未来で破滅的な戦争が起こり、人類は死滅していないけど壊滅的な被害を受けてしまった世界が舞台・・・だとか思っていると、ん?現代とそう変わらない都市風景が描かれていて、ナニコレ?とか思う。
 複数の視点から描かれているところが神林さんの作品としては珍しい・・・事はないか。戦闘妖精雪風はそんな感じだったなぁ。
 何が幸せなのか、という事を探す作品のような気がする。そしてヒロインの少女の名前は、とうとう最後まで出てこなかった。まぁ出てこなくてもいいんですけど。こんだけ『愛する少女』として何度も描写されれば、そのイメージは強烈に残る。というか、少女がまたまた『愛する女』だったという話だったのか?
 読了後、神林ワールドだったなぁ、と深い感慨を覚えました。ごく普通にこういう事を描く人は、あんまりいないと思いマス。はい。