待ち伏せ

 今朝出かけようとして玄関の扉を開けたらゴキ侵入。咄嗟に踏み潰して庭の鉢植えの肥やしになーれ、と放り込んでやったけど、そろそろ熱帯気候好きなゴキたちには辛い季節になったのかのぉ・・・そのまま死滅するがよい(ブラック
 まぁ彼らはしぶといので暖かい人家に侵入し冬を越すのでしょうけれどネ。うちもしばらくそういう攻防戦があるかも知れません。
 さて、読んだもの。

 割と明治期から大正期にかけて、東京を舞台にした文学作品に『ニコライ堂』というロシア正教・・・もとい日本正教の伽藍が出てくるのですが、そういえば、そういう事に関する文章を読んだ事がないな、と図書館でタイトルを見た時に思ったので読んでみました。
 ニコライという人は帝政ロシア期、維新前夜の日本に宣教の為にやってきたロシア正教の修道士で、布教の功績により大主教にまでなった人ですが、日本にほぼ永住。ロシアからの募金と自分の給与の全てを投げ打って、日本に正教を広めよう、人材を育成しようと努力した、陽気で真面目で、ロシア人としては珍しく几帳面な人でした。
 とても善人で善意に溢れ、だからこそ人を見る目がないというのが唯一にして最大の欠点。
 ご本人の熱意、至誠はキリスト教宣教師というものを胡散臭いものと見る人にとっても尊敬すべきものでしたが、ご本人が立派でもそれに群がる人々というのが・・・
 幕末の混乱期、一旗あげようという『志士』というならず者が跋扈した時期であり、志を立てられなかった連中が、開国を睨んで外国の文物を学ぼうとしていました。ニコライさんのアンテナに引っかかって正教やロシア語を学んだ人々がそういう人たちで、信じてロシア留学に送り出したら、品性下劣になって戻ってきた、という事例が山ほど。
 彼らにしてみれば、我輩、生きていく為の技能を身につけた。我輩とても偉い!という気持ちになったのでしょうね。ロシア留学から帰った連中は、正教布教の助けにならず、もっと給料の良い職場に行ってしまい、残ったのは善意の人でも魯鈍な人か我意私欲の人ばかりという。
 それにニコライという人は人が良すぎて、一旦その人を信じたら信じ抜いてしまい、その人が不正をしていても讒言だと思ってしまうので、後発の心ある人たちが正教から去っていくという悪循環。
 男たちの体たらくに比して女性の教育者たちは大変な成果をあげましたが、それもニコライさんの生前までで、亡くなった後は教団を食い物にする連中の稚拙なやり方に衰えていきます。
 日露戦争、そしてロシア革命によって日本とロシアの関係が悪化した事もあり、日本における正教の環境は悪化。近年まで紆余曲折がありましたか、何とか組織は存続しているようです。名古屋にも教会があるようですよ?
 さて、この本を読んで初めて知ったのですが、正教はローマ・カトリックのような世界組織はなく、国単位の教会でなりたっているそうで、日本も財政的に自給自足になっている今は独立した教会なのだそうです。まぁ政治的にはロシアとアメリカの綱引きの線上にあって、政治的に稚拙な日本正教会は翻弄されている感じ。誠実、純朴なニコライさんの性格そのままな印象。
 近年まで歴史に埋もれてしまっていたニコライさんを『発掘』なさったのが著者の方だそうで、その研究は始まったばかり、みたいなところ(とはいえその方は三十五年も研究していらっしゃる・・・家族の手伝いしかないし他に研究者がいないから、調査、検証に時間がかかるのは仕方ない)
 ニコライさんが言うように「ロシアは大陸国、日本は海洋国だから、利害がぶつかる筈がない」というのは過去の歴史を見て幻想に過ぎなかったのですが、まぁそれに近い関係にはなれればいいですねー。北方領土問題はかなり難しいけどナ。