やっと読めた

 読むのに時間がかかったのではなく、読むまでに時間がかかったという意味です。読もうと思い立った時は、ドラマ化や映画化で関心が高く、図書館の書棚になかったものですから。

白夜行

白夜行

 ドラマの関係者の方が、桐原亮二と西村雪穂を怪物として描きたくなかったみたいな事を言っていると、wikiで読んだのですけど、この物語は二人が怪物になってるから成り立つのであり、だからこそ悲しい物語になるのだと思うのですけれども。
 初期こそ最初の犯罪を、それも虐待されたが為の犯罪を隠蔽する為に罪を重ねるのですが、それが次第に自分たちの欲望を満たすものへとエスカレートしていきます。原作は、その被害を受けたり命を落としたりする人々の視線から追った連作であり、二人の内面に触れる事は、ほぼありません。だからこそそれを想像し、頭の回転が良くても短絡な子供染みて性急な犯罪に暗澹とし、ため息を尽きます。
 自分にはそれこそがこの物語の魅力であり、『犯罪に走らざるを得なかった可哀想な二人』では、片手落ちになるのではないかと思います。いや、ドラマも映画も見ていないのでそんな事を言う資格は、まったくありませんがネ。
 というよりも複数の視点から二人の行動を記述するというのは小説だからこそできる手法であり、映像作品でそれをやってしまったら、たぶん混乱してしまいます。そういう意味では物事を単純化する事こそ成功の道だと思うので、映像化に際してはその決断は正しいのではないかと。
 でも、日本の映像化されたミステリーって、本当にお涙ちょうだいな犯人が多いよねー。いや、展開とかも。欲望のみで犯罪を犯すという犯人だけでは、ドラマ化できないのかな。日本人はウィットですな・・・