読むのに時間がかかった

 最近図書館で借りて読む本は圧倒的に小説が多かったので、大変早く読めたのですが、久しぶりに研究書みたいな本を読んだので、一週間以上かかりました。といっても最新研究じゃなくて、老齢研究家のまとめみたいなものですが。

ドイツ中世前期の歴史像

ドイツ中世前期の歴史像

 ドイツですが、最初からそんな国があった訳ではないので、とりあえずフランク王国成立から話が始まっています。んで、とりあえずシュタウフェン朝滅亡まで。
 良く言われる事ですが、統一国家イングランドの幸いは外来征服王朝の容赦なさと、それが実行できる国土のコンパクトさ。統一国家フランスにとっての幸いはカペー王朝の奇跡のような連続性(男子系で三百年続く家はまずない)、その政策の連続性と逆説ですが国土の半分を結婚で得た強大なプランタジュネ家との死闘に勝利したことでした。
 ドイツにとっての不幸は、まず王家は外来征服王家ではないし、国土の線引きは難しいし、王家の連続性はだいたい百年だし、強力なライバルたちはいても、他に恐怖されるような巨大な敵は存在しなかった。
 よくローマ皇帝の幻想ゆえにイタリア政策に精力を使い果たしたと言われますが、当時の政治状況では仕方ない事でした。教皇庁との距離感はイングランドはもちろんフランスよりも近しいのですから。その意味では世俗権力にとって教会勢力は枷でしかないのかも知れません。
 面白いのは評価が高いフリードリヒ二世への点数が辛いこと。シチリア王としては活動的だけどドイツ王としては諸侯に譲歩し続けて、国家としての紐帯を破壊した、というのです。確かに彼はドイツ名のフリードリヒよりもイタリア名のフェデリーコと呼んだ方がいいくらいの男ですからネ。
 面白いなぁ。