ベル・エポックの時代

 こんな本を読んでみました。

 近代イギリスの著名な国王というとヴィクトリア女王がいますが、彼女の治世は、その謹厳実直、生真面目な性格ゆえに堅苦しく、不道徳な事が陰にこもって繁栄と貧困、背徳が混じっているような印象を受けます。
 彼女の息子、エドワード七世は反対に陽気で放埓、それだけでも母親と合わないのに、夫のアルバート公が彼の不行状を注意する為に病をおした為に死を早めたと彼女が考えた為、エドワード七世は太子でありながらまったく政治に関わらせてもらえませんでした。
 ただ、まぁ六十近くまで太子をやっている訳ですから、こんな異常状態が許される筈もないし、夫が亡くなってからは引きこもってしまい公の場にほとんど姿を見せなくなった女王に代わって民衆に姿を見せ、外国との儀礼にも参加する彼の方が政治家にも評価されるようになり、こっそりと機密文章にも目を通せるようになったらしいですが。
 国王としての活動期間は十年に満たないのですが、日本とのかかわりだけでも日英同盟日露戦争へのひそかな支援は、エドワード七世の治世下に行われました。
 ヨーロッパ、アメリカに関して言えば、イタリアとオーストリア以外の王家は全て親戚という血縁を生かして王室外交を展開し、ヨーロッパの平和維持に努めました。それまで対立していたフランスやアメリカと今日まで続く友好関係を築けたのは、この人の働きもありました。
 しかし一方でそれまで友好関係を結んでいたプロイセン→ドイツとは関係悪化。上昇一方のドイツと覇権国イギリスとの軋轢が、第一次大戦の一因になった事は間違いなく、その限界も指摘されていますが、もはや国王一人がどうこうしても国際関係を変える事にはならない、国家の総合的な力や世論が全ての動きを決定する時代に突入した、そういう事なのでしょうね。
 まぁ、伝記ものなのでエドワード七世擁護の文章になっちまっているのがアレですが。