知らない事が多かったので

 二十年以上前に崩壊した国の歴史です。

ソ連史 (ちくま新書)

ソ連史 (ちくま新書)

 全体主義の抑圧された人々の国・・・ってイメージがありましたが、やや違うようです。中間の官僚はともかく最高指導部の人間は、何とか国民の生活向上をはかりたいと考え、直接的な意見陳情を歓迎し、できうる限りそれに答えていたようです。んで、何百万単位という手紙が年間に届くという。
 スターリンはともかく、その後の執行部は善意で経済計画を実行するのですが机上の空論でもあり、官僚が実績をあげる為にしゃかりきになるので食肉の増産を目論んだのに、種付け用の家畜まで殺して壊滅的な打撃をこうむったり、市場価格を低く抑えた為に農業従事者の勤労意欲を削いでしまったり、またノルマを達成すれば給金はもらえるとあって真剣に働かなくなり、また月末に収支さえあっていれば良いと急いで増産する為、人を確保しなくてはならない。その為、通常業務では人あまりになり、勤務中に飲酒したり買い物に出かけたりと、就労倫理が崩れてしまう。
 企業も下手にノルマ以上の生産をすると次からノルマが増えてしまうので、ノルマ前後の生産しかしないし、給金は十分もらっているので購買欲はあるけど、店頭に並ぶ商品が限られているので、随時品不足という。
 その上、正規の流通からの横流しが横行し、誰でも普通にやっているという。余計に品不足に拍車がかかる・・・
 先日遊んだポーランドボドゲ『行列』はとても的確に社会主義経済の実態を表現していますネ!!
 表だって言っていい事と悪い事を自然に身につけていて、会議の時には活発に発言しており、実際にそれが政策に反映されるかどうかは解りませんけど、とにかくガス抜きは行われていた、と。
 しかし五十年代までのスターリン時代の粛清の後、党や国家は安定期に入り、ろくに仕事もできない人間が何十年も指導的役職について老害と思えるような閉塞感、停滞感が世間を覆ったようです。
 それでも六十年代は西側よりも福祉面で先進的的で、暮らし向きも少しづつ良くなり、共産主義は人を幸せにすると本気で信じられていたようですが、上述の停滞、閉塞、そして西側との経済、技術格差を目の当たりにして不満が爆発。情報公開によって共産党が大戦間期にやってきた非人道的な事が暴露され、その支配に正当性が失われ、保守派のクーデター失敗を機に崩壊とあいなりました。
 しかしソ連の中心をなしたロシアは相変わらず天然資源に頼りきりの経済のように見え、都会と農村の格差は大きく、少しでもやる気のあるロシア人は国外に出てしまうようです。なんか体質は変わっていない。
 国内で積極的に仕事をみつけて働くという意欲が培われないと、資源がなくなってしまった後、一体どうなるのか。うーむ。
 あ、しかしですね、毛沢東が中国に共産主義みたいなものを導入した理由は解りました。共産主義っていっても君主制と変わらない。ただトップが世襲制じゃないだけだもんね。伝統的に帝政の中国の政治体制になじむはずですわ。