いそげっっ

 急いで読み終えるには過酷な分量でしたが、何とか読み終えました。

シモン・ド・モンフォールの乱

シモン・ド・モンフォールの乱

 またしても、内容と題名が微妙に異なる論文。その恣意性が裏目に出て大陸領土の大半を奪われたイングランドのジョン欠地王。その息子で大陸領土奪還を目論みながら、組む相手を間違えて失敗したヘンリー三世。
 そのヘンリー三世が十字軍の代わりに教皇に教唆?命じられたシチリア王位奪取。そしてその遠征費用を諸侯に出してくれよと頼んで拒否られた事から始まる、異父弟を始めとする側近と諸侯の使い分け、不公平感が諸侯たちの反感を呼び、爆発し、軍事的にヘンリー三世が敗北したのがシモン・ド・モンフォールの乱でした。
 通説では諸侯による共和制への模索と失敗ってな感じで語られるのですが、実際はそんな階級闘争とはまったく関係なく、それぞれの諸侯や聖俗中小領主の王との距離感、特権を侵害されたか否か、によって王と対立したり、王の与党となったりしたようです。
 ただ問題はヘンリー三世が取り立てた異父弟のリュジニャン家四兄弟が、権利を主張し諸侯の特権を侵害するのに比して王家の家政はともかく、王国の利益にほとんど役立っていないという事実が、『無能で欲張りな連中』というイメージになったようです。リュジニャン家はフランス家系ですが、フランス政界とのパイプを持たず、またヘンリー三世の大陸反攻への現地戦力として期待されたにも関わらず、軽はずみな行為でルイ九世に察知されて大敗を喫するというお間抜けぶり。
 聖王ルイ、十字軍の失敗とかで結構侮っていたけど、割とやり手の王様ですネ。まぁ歴代フランス王が手本にしたご先祖様の一人ですから、ゆるいわけがないけど。
 本の内容は、シモン・ド・モンフォールとその支持者たちや反乱に関わったもの、王家与党の実態が通説とは違うよ?という感じ。そして比較的『ダメ王』と言われるヘンリー三世の息子、エドワード一世はその事跡からいたずらに『英雄』扱いされるのですが、父親の失敗を見て、諸侯たちの扱いに気をつけたから、それなりの事跡を残せた訳で、決して彼一人の英雄性だけの問題ではないよ、てな話でした。
 ようやく完読したような気分。いや、慌てて読んだから、スミからスミまでとはいかないけど。
 さぁ時間を見つけて返却して、予約した本を取りにいかなきゃだわ。