スペイン継承戦争を読み終えて

 議会制民主主義というものが今の世界において、とりあえず信用される政体とされていますが、結局のところあくまで器でしかなく、当たり前の事ですがそれを運用する人(政治家)のモラル次第で良くも悪くもなるという事ですよね。
 スペイン継承戦争期のイングランドはまさにそれで、戦争中挙国一致する事はなく、ホイッグとトーリーに分かれた党派争いにイングランドの政界どころか、戦争の行方さえも制約されるという。
 きっかけが、王家断絶となったスペインにフランスのルイ十四世が孫の一人を国王として送り込んだ事。なので戦争はフランス、スペイン対イングランド、オランダ、オーストリア、ハノーヴァー、ブランデンブルグなどの同盟という構図。
 前の戦争まで不敗を誇り、同盟側はせいぜいその押さえ込みをするしかなかったフランス軍に対して勝利を収めたイングランドマールバラ公。本来なら喜ばしい話である筈なのに、党利党略にさえぎられてイングランドはその利益を十二分に活かしきる事ができず、状況にながされて戦争は長期化。
 それを嫌ったトーリーが政権を握ると、今度は他の同盟国を出し抜く形でフランスと単独講和を結んでしまう。
 結果として勢力均衡の条約として、戦争続きだった過去の百年に比べれば、三十年の平穏な時間を提供したのは、確かに評価されるべきことでしたが、しかしイングランドという国に対する評価というのは「大英帝国が日が沈まないのは、日が沈んだ後にイングランド人がする事に神様が耐えられないからさ」なーんて言われてしまうような印象に。
 日本にとっては『紳士の国』イメージしかないので実感が薄いのですが、中東パレスチナの混乱と悲劇がイギリスの二枚舌外交の結果とか考えると、結構世界中の紛争の種はイギリスが撒いているのかも知れないなぁと思ったり。もちろん育てているのは当事者たちなんですがネ。
 あとルイ十四世については、日本では絶対王政バロック、そんな文化の面ばかり語られますが、彼の統治下は絶え間ない戦争の連続でした。ルイ十四世側から見た、彼の戦争の世紀とかまとめてくれると嬉しいよなぁ、とか思ったりしたり。
 しかし、思い切って買ったかいはありましたよ。

スペイン継承戦争―マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史

スペイン継承戦争―マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史