久しぶりの雨

 土砂降りとかではなく、しと・・・しと・・・という控えめな降りでござります。今週末はこんな感じなのかなぁ。明日はD&D4eトゥーム・オブ・ホラーだけど、上がっていて欲しいなぁ。
 さて、昨日読み終えたもの。

流沙の塔〈上〉

流沙の塔〈上〉

 船戸さんの作品にしては珍しく朝日新聞社から出版された作品。文庫版は朝日文庫新潮文庫、徳間文庫と三種類も出ている。へー・・・
 舞台は日本から中国、広州、四川、ウイグル自治区。相変わらずの容赦のない展開。主要登場人物は全滅し、最後に生き残った中国諜報機関の中堅ボスも過去の倫理的悪行を、普通の感覚ならやらないだろう、でも中国人なら・・・どうだろう?という悪行を上司に知られて失脚。
 最初は横浜客家華僑ボスのぐうたら息子が囲っていたロシア女が、奇妙な殺され方で発見されたところから始まります。広州でも同じ客家ボスのぐうたらな息子が同じようにロシア女を囲っていて、同じような殺され方をした。殺されたのは二人とも北京語を流暢に話すロシア女というのも奇妙な話。その事件を調べるようにと横浜のボスに息子同然に育てられた日本国籍を持つけど何人か解らない男が命令されるのが最初の事件。
 それから四川でチベット人の女性と将来を約束した人民解放軍兵士が、その女性がチベット独立運動を支援したとして囚われ、彼女を人質にとられて特殊工作員として仕立て上げられる事に・・・。
 ウイグルでは恋人が当局に逮捕された後、不可解な死に方をした事に憤った若い電気技師が復讐の為に東ウイグル独立運動のテロリストになっていく。
 一方、中国中央では上司の弱味を握った女性幹部が朝鮮系中国人のエージェントを使い、それらの事件を全て把握していた。
 一見無関係な出来事が次第に結びついていき、最後には全滅というなかなか凄い話。もっと凄いのは中国政府の腐敗とか、裏社会のこと、チベットウイグル独立運動に言及した作品を朝日新聞社が出版したこと。新聞部と書籍部は別ってことなのかな?もっとも版権が三社に渡って移っているのを見ると、政治的な何かがあったとしか思えないのだけれども。
 前に読んだロシア・マフィアの抗争を描いた『緋色の時代』は少し表現が単調でくどいなぁ、と思ったのですが、こちらは気になりませんでした。完成度はこちらの方が高いのかな。
 心が冷え冷えとしましたが、嫌いじゃないですよ、こういうの。ふふふ・・・