図書館へ返却

 愛知県図書館は六冊まで二十一日間、本を貸し出してくれます。だいたいギリギリ一杯かかって六冊読み終えるのですが、今回は新幹線の移動とか、イベントとか、読みやすい本とかが多かったので、予定よりも一週間早く全て読み終えました。
 昨日最後の本を読み終えましてネ。

虹の谷の五月

虹の谷の五月

 時は二十世紀最後の三年間。場所はフィリピン、セブ島。その山間の小さな集落が舞台。
 船戸さんの作品、だいたいドロップアウトした男が主人公なのですが、今回は十三歳の少年が十五歳になるまで。大人になっていく、というと甘い憧憬が含まれるのですが、そんなものは微塵も含まれていません!
 厳しく容赦ない現実。最悪な品のない大人たち。しかし、一握りの優しい良識のある人たちが少年の周りにいて、彼を助け、そして死んでいきます。育ての親である祖父。組織を放逐されても一人戦い続けるゲリラ戦士。貧乏な人からは治療費を受け取らない日本人医師。
 少年が主人公なら爽やかなラストかも知れぬと思いましたが、甘かったですネ。淡い恋心を抱いていた幼馴染の少女もお金の為に日本に行かなくてはならなくなり、頼れる大人たちは全て死んで少年は孤独になります。しばらくは亡くなった日本人医師の意思を継ぎ、医者になると決意した友人を経済的に助ける為に闘鶏で金を稼ぐ。けれども三年たったらやめる。その後の事は決めていない。なんとかなるだろう。
 そういう少年を見て少女は、何だか急に大人になったみたいだ。怖いぐらいに、と言います。修羅場をくぐって性根が座ったというのは簡単だけど、彼の前途には相変わらず酷い大人や社会が広がっていて、何も変わっていないんですよね。
 それはどんな時代でも社会でも同じ事で、それでも人は生きていくしかないのだと、そんな事を考えたりしたり。
 ・・・今日もまた、船戸さんの作品を借りれるかなぁ・・・