読み終えたものが多くて・・・
- 作者: 色摩力夫
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/07
- メディア: 単行本
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スペイン黄金期・・・というかヨーロッパに覇権を唱えていた、覇権を維持しようとした最後の『スペイン人』政治家オリバーレス。名前は知っているけど、だいたい否定的な話題でしか聞かないので、肯定的な意見を読んでみようと手にとってみました・・・この文章はどうにかならんかと何度も思いながら。
言い訳のように客観的に書かなきゃダメだとか書かなきゃいいのに・・・事実と自分の感想を並べるしか、この手の書き物は成立しないと思う・・・
それはさておき、オリバーレス伯爵。スペインの名門貴族の傍系。なかなか有能。物凄い野心家。しかし・・・協調性は薄い?
スペインという国がオリバーレスが活躍した、いわゆる三十年戦争を期に凋落の一途をたどり、ヨーロッパのパワーゲームの主役に二度となれなかったからなのでしょうか、三十年戦争で荒廃したドイツがその後、普仏戦争後に統一され、二十世紀、現代に至るまでよくも悪くも話題の中心にいて、そのせいか三十年戦争の研究は進んでいるのですが、完全に裏街道に入ってしまったスペインの、それも没落を『決定付けた』政治家という評価の高いオリバーレスはスペインでも軽蔑されているという・・・哀れ。
同時期にフランスで活躍しフランス絶対主義の確立に貢献したリシュリューがフランスの偉人に数えられているのとは、正反対の評価。
二人を並べて書いているのですが、二人が目指したものは同じでも、国力、軍事力は当時『世界帝国』だったスペインが格段に上でも、過去にアルヴィジョワ十字軍などで南仏ラングドックを征服同化したフランスと比べると、カステーリャ、アラゴン、バレンシア、カタルーニャ、バスクなどなどスペイン本土だけでもこれだけの、独立した行政機構を持つスペインは国民国家として統合する事はできず・・・現代でもバスクとか独立目指してテロしたりするもんな・・・結果としてスペインは三十年戦争、オランダ八十年戦争の敗北を期に没落したと。
しかしこれはスペインの宿業であり、フェリペ二世の時代から克服できなかった問題であり、オリバーレスに全てをおっかぶせるというのは気の毒な話で、ある意味仕方ないのかな、と。反乱するユグノーを力づくで押さえ込む事に成功したフランスと、フランドル新教徒と八十年も戦争して新世界の富みをつぎ込み破産したスペインとの差とでも言うべきでしょうか?
今後、研究が深まればいいなぁ、と思った次第です。