読み終えて満足

 先日書き込んだ『中国先秦史の研究』を読み終えて、結構納得できたところ多々ありました。
 富国強兵にまい進したとはいえ、何故西の端に位置する秦が他の諸侯国を滅ぼし、『天下』を統一できたのかが、必然的な物語ではなく、客観的な、主に外的理由で説明されていました。
 春秋から戦国中期にいたるまで、軍事的に最強であったのは、やはり春秋期の覇者、晋を構成していた趙、韓、魏の三晋でした。この三国が連合すると辺境の大国である秦、楚、斉といえども勝つことができない。ただ三晋自身の領地が互いに飛び地していたり絡み合ったりしていて、利害の対立が発生すると互いに激しく戦い合うという展開に。
 趙は河北の辺境地を征服する事で強大になり、韓は中原の交通の要所、鄭を征服して国力を蓄えていましたが、魏だけが出遅れていました。そこで魏は名目上の上位支配者、周王朝を頂き、かつての覇者の如く中原を睥睨してヘゲモニーを取ろうとしたのですが、覇者は弱小諸侯の独立、存在を保持しなければならず、小国の併合を目論んでいた強国、大国からの反発が激しくなり、言ってしまえば中原の衛を征服しようとしていた趙、既に鄭を征服していた韓が魏と対立、魏は趙、韓、場合によっては他の諸侯とも戦い続ける羽目に。最初は軍事的優位を保っていましたが、明確な政治目的を持たない施政が仇となり、結局弱体。また趙、韓も疲弊し、他の諸侯の中で魏の西の領域を蚕食した秦の優位が確定した、というお話。
 そういう話を聞くと、秦の君主が怠惰だったから統一が遅れた、とか言われるよりも納得できます。それに統一までの秦のライバルは楚であり、最大の障害は趙で、どちらも広大な後背地を持っていて技術的な革新がなくても耕地、農地を広げて国力、つまり人口増加が見込める国でしたから、これも納得できます。
 精神論で言われるよりも、納得できました。故安能務さんの著作に触れた以来の、中国古代分野の収穫でした。面白かったナ。難しいけどネ。