流行もの?を読んでみた

 といっても映画化されたのは去年だったかしらん?今もTシャツ柄になっているこの方の評伝を、理解しやすい方がいいからって日本人著者のものを読んでいました。とはいえ初版が1970年代初頭。読んだハードカバーも1998年に発行されたもの。もう十二年も前か。

チェ・ゲバラ伝

チェ・ゲバラ伝

 南米の革命家です。革命=テロなイメージを持ってしまっている私にとって革命家はテロリストのイメージなのですが、この人や先年引退を表明したフィデル・カストロは毛色が違います。カストロは政治家なのでまたイメージが違うのですが、チェ・ゲバラはとてもストイックなんですよネ。
 「銃弾でなければ革命は起こせない」これが彼の持論ですが、日本にいると理解できない言葉です。今の南米は多少変わっているかも知れませんが、今から五十年前のそこはまるっきり暗黒の中世でした。人種や生まれによって規定される身分、将来。収奪される民衆。過剰に豊かな一握りの特権階級は、それを貪るだけ。アメリカは自由に貪れ、ソ連は「俺が法律」みたいな感じで、言葉は違っても発展途上国の富を収奪するのは変わりない。
 ではどうすればいいのか?力づくで変えるしかない。これが医者として世の中に奉仕する事を夢見ていた若き日のチェの結論でした。
 頭が良く、物欲優先の南米の人々の中にあって献身的で、何もかも率先して働く人。人によっては傲慢に映ったり、規律に煩い奴ととらえられかねないのですが、彼を終生悩ませた喘息と戦いながら、あくまで率直にストイックに生きていきます。
 世界中で今も革命が起こっていますが、そのほとんどは権力を握りたい人々のクーデターでしかなく、富を収奪する人が変わるだけ。
 ただキューバだけは違うようにみえます。アメリカの経済制裁は続いていて、とても豊かとは言えませんが、革命前には家畜は医者にかかれても貧しい人は医者にみてもらう事はできなかったキューバ。今では全国民が無料で医療を受ける事ができ、医学部にも無料で進学できます。南米ではトップクラスの医学レベルだそうです。
 識字率も100%に近い。国民が豊かになる為には文字を知り情報に接して自分で物を考えなければならないからです。
 あと権力者一門が特権的な経済利益を受けるのが当たり前なのですが、少なくともカストロ一族はまったく表には出てこない。現在のキューバ最高指導者ラウル・カストロフィデルの弟ですが、彼は革命期から兄と一緒に戦った仲で、彼以外にカストロの身内は政府要人にはいないようです。
 あと、革命戦争を遂行する彼らは、略奪をしません。必ず食料や水はお金を出して買います。そうしなければ人々の支持を得られないと理解しているからです。
 本当は、こういう人たちこそが革命家、政治家であって欲しいのですが、現実はまったく逆で、権力を、そして富を収奪する人ばかりが目につきます。だからこそ、死後数十年たつ「当たり前の人」が偉人のように扱われるのかもしれないなぁ、と思ったりして。
 そう考えると、とても切ないですネ。「狂っているのは世界の方だ」という言葉が何処からともなく聞こえてきそうですが、そう考えると世界から抹殺されそうだ。
 怖いなぁ・・・