台風がくるですよ!!

 それなのに今夜は飲み会ですよ、せにょーる。アホですね。いや、飲み会の予定は半月も前から決まっていた事なので、この場合は台風の方が空気読めていないという・・・気圧の変化によって生じた台風が空気読めないなんて、もう何も信じられない(なんじゃそら
 前から嵐の中で稲光や突風をめでながら酒を飲みたいなぁ、なんてバカな事を考えていたのですが、今夜の河岸は地下でございますので、そういうとち狂った楽しみ方はできません。残念ナリ。
 しかし、もう少しで読み終わる本の内容を考えると、そんな能天気な事を考えられるだけで幸せな身分とか思ってしまいますよ。

砂漠のキツネ

砂漠のキツネ

 表題はドイツの著名な軍人、エルヴィン・ロンメルのあだ名です。昔戦車のプラモデルを作っていた頃は、ドイツ・アフリカ軍団ってのは凄い格好良くて、凄く優秀な軍隊というイメージがあったのですが、実像は拙速の機甲戦を挑むドイツ・イタリア枢軸軍に対し、第一次大戦と同じ陣地戦で対応して、つまり主導権を握られてしまって物量を生かしきれなかった大英帝国軍って感じです。戦車、兵器、補給、空軍力、そして制海権までが連合国側に握られた状態で、乏しい補給と英軍からの鹵獲品だけで戦い続けたドイツ・イタリア軍は、まさに貧乏人の軍隊でした。彼らは奇襲、つまり相手の意表をついている限りは主導権を握り続けたのですが、一度それが失敗すると、つまり英軍の指揮官が慎重派、物量信仰派ともいえるモンゴメリー代わった時から一挙に瓦解しました。
 アフリカのドイツ・イタリア軍にとっての敵は目の前の英軍だけでなく、北アフリカの戦略的重要性を認識せずに戦線を拡大したドイツ、イタリアの首脳部でもあり、結果として物量の乏しい枢軸軍は勇戦するも、弾薬切れ、燃料切れで継戦能力を失い、制空権を奪われて機甲戦力は無力化し、はっきりいえば負けた、と。
 ロンメルという人は一種の博打うちという印象があります。まぁ他に選択肢がなく、少数劣勢の味方が優位を保つためにには常に攻撃し続けなければならないという事は理解します。対する英軍の方は、自分たちと同じ物量を相手が持っていると認識するので、ロンメルの速攻に恐怖する訳ですが、うろたえずに冷静に対処すれば物量に勝る方がいずれは勝利を収めるわけで・・・戦記ものを読んでいると、ほんとにパニックに陥ったものは大変脆く負けてたり死んだりしているのが解ります。
 だいたいドイツで百何十台の戦車を倒したとか、百何十機の戦闘機を落としたとかいうエースと呼ばれる人々は、だいたい熱狂からほど遠いところにいる人々でした。真面目で内証的で、そして死の土壇場でも冷静な判断ができた人たち。恐怖に打ち勝つというよりも、目の前の問題をいかに的確に処理するか。それに徹する事ができた人だけが生き残る可能性をものにできたように感じます。
 しかし・・・読んでいると時々信じられないエピソードが出てきます。一番目を疑ったのはドイツ軍の捕虜になった英軍中尉。戦車戦で捕虜になり英軍の砲撃に逃げ惑う戦車の中でドイツの将兵に「たばこ、どう?」と差し出す。ドイツ兵たちはそれどころじゃないから断る。そして被弾。ドイツ兵も捕虜も戦車から命からがら逃げ出し、ドイツ軍の車列へ。負傷した戦車兵とともに捕虜は後方に移送される事になったのですが、その時怪我をしたドイツの将校は自分が武器を携帯しておらず、戦いのドサクサで捕虜の武装解除をしていなかった事に気付く。将校はそれとなく運転手に武装しているかと聞くが彼の武器もトランクの中。答えてから運転手は意味を悟り青ざめる。その時英軍中尉はにやりと笑った。気付かれたか?だがその中尉は自分の拳銃をドイツ将校の膝の上に置き、そしてにこやかにタバコを差し出した。「一本どうかね?」ドイツ将校は久しぶりに美味いタバコを吸ったそうな・・・
 アガサ・クリスティポアロものに、英国人のスポーツマンシップとかフェアプレイを揶揄する場面が良く出てくるのですが、まさかノンフィクションでお目にかかるとは思いませんでしたよ・・・まぁアーロン収容所とかの記事を読むと、フェアプレイ精神は白人の将校同士にしか発揮されないものなのね、とか思ったりしますが。