寒い日々が帰ってきましたネ

 いや、このまま暖かくなっていただいて、一向に構わないんですがネ。
 昨日ようやく読み終えました。

ヨムキプール戦争全史

ヨムキプール戦争全史

 まとまった資料が残っているのが、ほとんどイスラエル側のばかりで、しかも著者がユダヤ人であるので相対的にイスラエルに好意的。そしてアラブ諸国の中でいち早くイスラエルと平和条約を結んだ、その土台作りをしたエジプトのサダト大統領をかなり評価しています。
 ただ、読後にウィキペディアの関連記事を読むと、国内開発を促す為に平和を欲し、資金を得るためにアメリカに接近した為にエジプト国内は相対的に貧富の差が広がってしまい、貧しい階層出身者が多いイスラム原理主義者にサダト大統領は軍事パレードの閲兵の時に暗殺されます。
 エジプトの行為は、それまで潰すか潰されるかという二者択一しかなかったイスラエルとアラブの関係に、それ以外の、平和的共存というテーゼを持ち込み、それを実践してみせ欧米との関係もあわせて改善した事で、確かに評価されるべきです。近年はアラブ強硬派のリビアも関係改善に前向きで、イスラム革命で欧米化を否定したイランも、王政と革命を知らない世代が成長するにつれ、このままでいいのか?という意見の対立が見られます。
 ソ連が崩壊したのは、共産主義に対する資本主義の勝利、というよりも、世界規模の市場原理や流通競争から半ば鎖国した事により経済や技術革新が停滞した結果、と見る事もできます。
 グローバリゼイションという言葉は、それこそが最良と言われますが、しかし、それは決して欧米化ではありません。自分たちに不足しているものを他者から分けてもらい、自分たちが得意な分野で他者から利益を得る。結局のところ国内社会の常識を世界レベルに拡大するという意味であり、それによって経済が活性化し、技術が進歩し、人は自ら稼いだ糧で生きていく、最低限の自尊心を持って生きていくのだと思います。
 もちろん、世界規模の流通、市場が存在しているのですから、地球の裏側で起こった事で自分が破産する危険だってあるのでしょうが、それこそが、利益もリスクも共有する事が、世界が一つになるという意味なのでしょう。
 食糧自給率も大切かも知れないけれど、しかし現実に米作だけでは食べていけないと農家が考えて、より利益の上がる商品作物をつくる事で日本の農業は生き残っています。その品質は立派に他国でも高級品質として評価されるほどです。
 安価な商品は確かに確実に売れますが、高価な商品をお金持ちに買ってもらって、彼らが持っているお金を市場に吐き出してもらわないと景気は回復しないでしょう。
 なーんだか、考えが取りとめもなく広がってしまいましたが、これからも世界は憎みあい、血を流し合い、そして妥協したり友情を交わしたりしながら、回っていくのだろうなぁ、と、『第四次中東戦争』の停戦に、それぞれの思惑でアメリカ、ソ連(この二大超大国こそ、戦争が起こったら困る国もなかったのですよ)、エジプト、シリア、イスラエルが関わっていく課程を読んでいて、そんな事を思いました。