本当に暖かくなるのかいな?

 ちょっち不安・・・ですが、今日は日中晴れるようなので、たぶん気温が上がるかもよ。
 両親そろって風邪気味で、あたくしも胃腸風邪臭い感じ?日曜日の東京コミティアまでに症状が好転する事を祈るばかりでございます。飲み会はいっていますしの。
 さて、今現在読んでいるもの。

ヨムキプール戦争全史

ヨムキプール戦争全史

 世界史の教科書には第四次中東戦争と書かれていた筈です。今のところイスラエル対アラブ(主にエジプト、シリア)の最後の戦争。そしてもっとも大規模にやりあった戦争でもあります。
 六日戦争と呼ばれる第三次中東戦争で圧勝したイスラエルの慢心、臥薪嘗胆で軍組織を改革し、歩兵の対戦車装備を充実させ、「新興小国のくせに!」なんて慢心を排除し、用意周到に戦争準備をしたエジプト、シリアとの違いが面白いぐらい解ります。
 特にイスラエル軍、上層でも情報関係の長官クラスが、「アラブ諸国は単独ではイスラエルにはかなわない。シリアはエジプトと一緒でなければ戦争を仕掛けない。そしてエジプトはイスラエルに対して勝てないと思っている。だから戦争にはなりえない」と、明らかな戦争準備が諜報員、偵察衛星、前線兵士から報告されても、それを無視し、思い込みに固執し、決定的な証拠を自前で手に入れた参謀総長がアラブ側攻撃六時間前(推定)になって首相と国防相に報告して、イスラエルはようやく動員体制をとります。もう既にエジプトもシリアも十万人規模の兵力を前線に展開した後で、国境警備には千人を切った部隊と、百台に満たない機甲部隊(戦車部隊)しか存在しないイスラエルは、緒戦の立ち上がりで完全に出遅れます。それでも現場の最上級指揮官たちは事前準備の、既に前提の崩れた作戦に固執し前線の拠点から部隊を撤退させず、航空写真がないので効率的な対地攻撃ができない空軍の支援のないまま、逐次に虎の子の戦車部隊を投入して、やられる筈のない歩兵の対戦車兵器(対戦車ミサイルやRPGなどのロケット兵器)にボロボロに破壊されていきます。前線の拠点も数十人の部隊しかおらず、それぞれ孤立し、虱潰しに撃破されてしまう。それでもイスラエルの兵士たちは奮戦して、当時のエジプトの参謀総長は「上層部の腐敗と裏腹に前線兵士は勇敢だ」と評価しています。
 まだまだ緒戦の段階までしか読み進めていませんが、過去の栄光というものがどれほど人間の目を曇らせてしまうのか、という事が大変解りやすい形で書かれていてますね。前にも第四次中東戦争の戦記は読んだことがあるのですが、イスラエルの前線師団長さんのもので、総合的なものではなかったので今回は全体像が読めますね。特に、ヨルダン国王が「エジプトが戦争を起こす」と秘密裏にヘリでやってきてイスラエルの首相に告げる、なんて事実は知りませんでした。中立を維持してもヨルダンはイスラエルより、ということは知っていましたが、ここまで深入り、つまり事実上の味方であったとは知りませんでした。
 しかし、一国の元首が危険を犯して(アラブから見れば完全な裏切り行為)もたらした情報なのに、軍はそれを誤報と結論付けます。恐ろしいのは、四十三項目に渡って戦争の兆候をかぎつけているのに、それでもなおエジプトが攻めてこないという思い込みに縛られ、戦争の可能性は低いと断言し、軍事に疎い当時のイスラエル首相メイヤーはそれを信じるのです。
 確かに当時のアメリカ諜報当局も一目・・・というか盲目的に信頼していたイスラエル情報当局の判断ですから、そりゃ信じるわな。
 戦争は『悪』です。だが一方で人間性というものが如実にあらわれるスペクタクルでもある。だから、ノンフィクションと理解しながらも良質のフィクションを楽しむように読んでしまう。・・・うう、どうしようもないなぁ。