寒いんだか、暑いんだか
今読んでいるのが、コレ。
- 作者: エーベルハルトツァンガー,Eberhard Zangger,和泉雅人
- 出版社/メーカー: 大修館書店
- 発売日: 1997/10
- メディア: 単行本
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エジプトを襲った謎の「海の民」とは、実はアナトリア(現在のトルコ)西岸諸国で、それは東地中海から中東、メソポタミア北部のアッシリアまでも含んだ「世界的な」対立関係の一環であり、トロイア戦争もその中の一つである、という解釈です。なかなか説得力があります。当時の世界はシリアの帰属問題を巡って対立していたエジプトとヒッタイト(アナトリア北中部)という二つの大国が和睦し条約を結んだ事が基軸になっています。この両国と対立するのが、北部メソポタミアのアッシリアと北アフリカのリビア、そしてアナトリア西岸の交易都市国家群でした。反ヒッタイト=エジプト陣営と敵対しているが為にミケーネを始めとするギリシャのアカイア諸王国はヒッタイト側につきます。エジプトを荒廃させた「海の民」はリビアと戦争中のエジプトに襲い掛かった、つまりエジプトとヒッタイト同盟の要であったキプロスやシリアに楔を打ち込んだ西アナトリア諸国の軍であったということ。
その後ヒッタイトはアッシリアと西アナトリア諸国に圧迫されて滅亡し、また、西アナトリアもギリシャとの交戦の中で衰退、没落していきます。そしてギリシャもまたエーゲ海をまたがった遠征を幾度となく繰り返した為に力が弱まり、マケドニア、トラキア方面から進入したドーリア人たちとの抗争に敗れていきます。
なんだか、後年のローマ帝国の滅亡と同じく、他民族の玉突き現象で文明が活力をなくし荒廃していく様が解ります。
定説ではないようですが、なかなか面白いですね。
ローマ人はトロイアの後裔と称していますから、繁栄し、大国ヒッタイトやエジプトと抗争した歴史を持つトロイア=西アナトリア諸国は、古代においては偉大な民族と理解されたのでしょうねぇ。