読み終えましたー。
何をって、これを。
王狼たちの戦旗〈5〉―氷と炎の歌〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: ジョージ・R.R.マーティン,George R.R. Martin,岡部宏之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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まず、政治家がいない。
政治というのはどうしても長期スタンスで物事の成果が解るものですから、短期の戦乱ものではなかなか効果的にはでてこないものです。これはいいとして。
軍人がいない。
騎士とか出てきていますが、はっきり言いまして戦いの趨勢が全て奇策や奇襲で決定されているのですな。『常勝』ロブの勝ち戦は全て奇襲だし、スタンニスが弟レンリーを倒したのは魔法、キングズランディングの攻防も包囲軍の後ろをラニスターと南部軍が攻撃して、なのでまぁ奇襲ですわな。
劇的な展開で勝敗が決まるには奇襲が一番なんですが、奇襲を受けるということは索敵を怠っているということで、登場人物たちもいっております、「歩哨も立てないまぬけ」って。周囲を警戒する事は初歩の初歩なのにそれすら怠っているということは、こいつら軍人じゃねーっと。そういう判断なんですが。
兵士がいない。
武装した人間は兵士ではありません。集団戦を行える訓練が施されていなければ、ただの武装した人間です。戦士は存在します。一騎打ちにこだわったり戦う事を名誉と考えたり。でも結局個人戦にのみ秀でているだけなのですよ。
あとは雑兵ばかり。勝ち戦では容赦なく略奪をし、負け戦では蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。つまりちゃんとした軍隊と言うものがほとんど出てきていないのですな。タイウィン・ラニスターの軍勢が軍隊っぽい気もするけど、単なるならず者の集団にも見える。
まぁ、魔法が出てきたり、乱世はこれからって展開なので、この段階でウェスタロスの戦乱を収めるのではないかと思わせるような人物が出てきてはいかんのでしょうが、残された登場人物たちに期待できる人材が、はっきりいっていない。四部までのあらすじを見るかぎり、スターク家は子供ばかりで路頭に迷っている感じ。ラニスター家はどうも内紛が激化しそう。一番好きなティリオンは逃亡者になりそうだし、バラシオン家は全滅臭く、残っていてもスタンニスでは・・・ねぇ?
ターガリエン王家の生き残りデナーリスはドラゴンを三頭連れていますが、政治家、軍人としてのセンスがあるのかどうか、未知数。
まぁこういう先行き不透明なところがこの物語の魅力であるし、作者も「ひいきはいない」と言っているあたり本当に解りません。
ただ、あまたの戦乱ものを読んでいる身からすると、物語後半で秩序を打ち立てる者とその人物が倒すべき相手が出てこないと、話がしまらないような気がします。
描写や演出は面白いのですが・・・やっぱり会戦というものを劇的に描くのは難しいって事だろうなぁ。『天才的』な軍事センスがないとそんな展開思いつかないもの。
創作もので、こいつはすごいって会戦描写、読んだことないもんな。やっぱり実際にあった事にはかなわないのだろうなぁ・・・。