居睡りできぬ

 冬なので寒い。寒いので睡魔がやってこない。でも疲れている。居睡りしないと頭がよく回りません。なんで疲れているかって、それはごにょごにょ・・・色っぽい理由でないことだけは確かだ。
 内田百輭の随筆の中に、戦時中の焼け出された晩の事が題材になっていて、考えてみれば戦火を生き残った当事者の貴重な証言なのだなと感心してみたり。
 米軍の空襲で籠のようなものに焼夷弾と小型爆弾が入っていて、それをB29がばら撒いている。近所の人が逃げ出そうとしたら首にその破片があたって頭がなくなっただとか、ご近所の鰻屋さんがご主人を残して全滅してしまい、そのご主人が日頃鰻を焼いている腕を振るって家族の遺体を焼いたとか、逃げ出した時明るい市ヶ谷の駅の方へ行こうとしたけど、奥さんが暗いほうが安全だといって賛成してそちらに逃げたので、火事で明るくなっていた市ヶ谷で焼死せずに済んだとか。
 内田さんらしいと思ったのは戦後、米軍が爆撃調査団なるもので一般市民への爆撃の効果を調べていた時、取調べ対象に内田さんも選ばれて「爆撃が怖かったか?」質問されて「怖い事は怖いが、雷様の方がもっと怖い」などと答えたものだから、ややこしい事になったとかなんとか。この方、雷さまが苦手で暗いところもイヤで(だから真っ暗がりでは不安で眠れないとのこと)、高所恐怖症で強面の割りにちょいとだらしないところがある。でも高所恐怖症と飛行機に乗る事は別みたいですネ。法政大学の学生飛行クラブの責任者をやらされ、始めは渋々でも次第にノリノリになり、イタリアのローマまで学生操縦手による飛行を企画、運営したらしいし、その関係でかなり飛行機にも乗っているのですから、まぁ、解らん人ですネ。