酒は飲みませんでした。

 そういう週末もありですな。
 内田百輭の『百鬼園日記帖』を読み終えて。
 二十代後半からの六年ほどを綴ったものなのですが、二十四歳で夫人の恋愛結婚して子供が三人、生活の拠点を東京に移し母親と祖母も呼び寄せていて、陸軍士官学校と海軍機関学校の独逸語教師をし、これからの人生順風満帆かと思いきや、借金で火の車。
 生活の利便性を追及し、そしてやや怠惰な内田さんの性格もあってか、規則正しく生活していればいらないと思うような出費をしています。まぁ始末屋じゃないからなんでしょうがネ。
 たとえば遅刻するからといってお金を借りてまで人力車を呼んだり、人様にごちそうしたり、家で食事をすればいいのにと思うときも外食したり、あと陸軍や海軍関係者として礼装しなければならなかったりと、その後法政の教授を兼務して人並み以上の収入ができても月給の日は借金取りがくるから憂鬱だとか言っている。
 それに家の者もよく病気になる。子供たちが熱を出したり、お祖母さんが肺炎になりかかったり、腎臓炎になっていると言われたり、ご本人もよく風邪をひく。
 収入の足しにと独逸文学の翻訳を引き受けているけれど「気が乗らない」とかでちっとも進まず、何枚かづつやっては出版社へ原稿料の前借をしたりして。一括して入稿して印税も寄越せとかいえれば、のちのち収入もいくらか増えたのでしょうけど、そういう性分ではなかったようですね。毎日学校に行かなくてもいい身分だから余計に生活が不規則で自堕落になりがち。たまに出かけると友人知人との金の貸し借り、質屋巡り。フロックコートがいるからって質屋に預けてあるから利子を払ってちょいと請け出すって、うーむ・・・。
 これは内田さんの性格と環境がなさしめる技というしかない。この借金は必然だからどうしようもない。苦しんでいるわりには達観しているような楽しんでいるような・・・まぁ、この後に人生最悪の時が来るようですから、まだのんびりしているのかな?