いい天気です

 という事は必然的に車の中は蒸し風呂状態・・・ヒー!!
 仕事が充実しているのはいいことですが、トラブルで充実しているというのは、生きているって感じがするけど、やっぱ望ましい事ではないわけで・・・むー・・・まぁ、なるようにしかならないか。
 今日読み終えたもの。

アメリカ大統領の戦争 戦争指揮官リンカーン (文春新書)

アメリカ大統領の戦争 戦争指揮官リンカーン (文春新書)

 南北戦争を電信室から見た本です。神格化さえされているリンカーン大統領の実像が垣間見れる内容。ただちょろりちょろりと入ってくる著者の感想には、なんだかなーという感想を持ちました。戦争は無慈悲なものであり、やるからには立ち止まらずに早急に決着をつけるべく『残酷』にならなければならない。と思います。戦争はどうしたって人は死ぬし財産は失われるし自然も破壊される行為です。回避する努力が報われなかった場合、とっとと終わらせる為には手段など選んでいる場合ではないです。戦争は長引けば長引くほど多くの悲劇をもたらすものですから。
 敵の戦力だけでなく、敵の生産設備、戦う意欲そのものを破壊しなければ戦争は終わらない、という認識で戦争を指揮していたリンカーンは近代戦に目覚めた人でした。ただし彼は弁護士あがりの政治家であり軍人ではなく、しばしば現場の指揮官たちの『暴走』あるいは『躊躇』に悩まされました。
 当時はナポレオン戦争期の戦力を壊滅させて和平に持ち込む方程式を皆が信じていた時代で、鉄道の輸送力、向上した工業力、武器の破壊力、そして実用化されたモールス電信による迅速な情報の伝達により、それまでの戦争の常識が覆ったことに玄人たちが気付かず、素人であったが故にリンカーンは気付く事ができたというのです。
 当初のリンカーンは大統領選挙で奴隷制廃止を訴えながら、分離独立しようとする諸州を引き止める為に奴隷制の存続は州の権限であると言って妥協し、支持者を失望させたり、反対者から冷笑されたりしました。しかし内戦が避けられないと解った時点で相手を無条件降伏させるまで戦い、国家の統一を図らなければならないと決意します。それが自由と民主主義を守る正義だといいます。
 ここでアメリカの決め台詞が出てくる訳ですよ。つまりアメリカ政府の行動原理はリンカーンによって規定された、あるいは南北戦争で決定付けられてからこっち、あんまり変わっていないんですよ。それに・・・なんか『スターウォーズ』でもそんなセリフを聞いたなぁ。悪い奴らは『分離主義者』って。
 アメリカにとっては『自由と民主主義』が文明の証っていうのも南北戦争以来なんですネ。その意味では、南北戦争アメリカという国家を規定し、アメリカ人の思想を支配しているのでしょうか。
 しかし、個人的エピソードではエイブラハム・リンカーンという人は、なかなか魅力的で面白い人のようです。偉人というのは引いちゃいますが、ホワイトハウスでは職を求められたり請願を聞いたりとくつろげなかった彼が、戦争省(のちの国防省?)の電信室でのみくつろぎ、若い電信士たちに冗談を言っていたとか読むと楽しいです。
 のちにリンカーンが暗殺されると戦争で活躍した電信室は閉鎖。軍人ではなく民間人であった彼らは戦死者も出たというのに国から保障も年金も何ももらえず、二十世紀に至るまで緘口令が引かれて沈黙を守らなくてはならなかったという運命にさらされるのですから、余計に印象的です。
 もしもリンカーンが暗殺されなかったら?
 少なくとも電信の重要性を認識していた彼ならば、若い電信士たちに冷や飯を食わせる事はなかったかも知れません。