晴れると気持ちいいですのぉ・・・

 前に図書館で借りて面白いと思い、今度は自前で買って読みました。
 『戦国鉄砲・傭兵隊』天下人に逆らった紀州雑賀衆
 信頼できる記録はほとんどなし。講談ものや稗史を排除して鈴木孫一や佐武伊賀といった土豪たちや傭兵のようにあちこちの戦に出かけていった雑賀の人々の話です。
 まず、悲壮感はゼロです。実にあっけらかんとあっちの出戦、こっちの篭城戦と色々な戦に参加しています。鉄砲の名手がおり、自前の水軍があり、遠く明まで交易(密貿易)しているような人々で、「俺たちゃ自由にやりたいんでい!」とばかりに信長や秀吉に逆らい続けました。
 著者によると日本人的な感性では感情移入しにくく、誰も擁護してくれない種類の人たちで、自分はどうやらご先祖が雑賀の出らしく、そこから興味を持って歴史を学んだので、こうして書いている、なんて言っています。
 私的には随分魅力的なんですがね。
 『判官びいき』の源義経とか三国志劉備とかが嫌いなので、つまりお涙ちょうだい、こいつを苛める奴が悪い奴だ!的な話が好きになれないものですから、あっけらかんと好き放題して、やろうとして、あげく自滅していく人々と言うのは因果応報的にもはっきりしているから楽しいです。
 まずもって大河ドラマ的な「戦のない世の中・・・」とかいう気持ち悪い事を言わないし、抑圧者からの解放とかいうバカな事も言わない。自分の都合にあえば信長、秀吉とも結んでしまう。そして抵抗する時は、徹底してやる。
 まずもって彼らが本願寺側に付かなければ信長は石山本願寺相手に十年も戦わなくて済みましたし、背後に彼らがいなければ、浅井、朝倉、武田、上杉といった大名相手の戦もかなり楽に戦えたと思われます。だって紀伊=和歌山に敵対勢力がいるから、畿内に必ず大規模な兵力を貼り付けなければならず、しかも雑賀衆を排除しようと一回目は十万、二回目は七万ほどの軍勢を差し向けたにも関わらず、勝てなかったんですよねー。
 勝因は鉄砲の名手がごろごろ、千人単位でいて、それらが砦に立てこもって寄せ手の精鋭先鋒を撃ち殺してしまったから、被害を気にした信長が引いてしまった、という事で、畿内を制圧し徳川を黙らせる事に成功した秀吉が大軍を持って被害も構わず攻撃させたら、そりゃかないませんね。
 ちなみに、家康は秀吉より戦上手、小牧長久手の戦いを見れば明らかー、という説がありますが、秀吉の目が西向きだったから助かっただけです。小牧長久手の戦いは持久戦の様相を呈し、家康の領国は畑を耕す者もいないほど荒れ果ててしまいました。秀吉側は領国支配を強化しておりますから、両者の力量の差は明らかです。戦術レベルで勝っても、そこは多分に運の割合があり、その被害を最小限に食い止め、或いは好機を最大限に生かす事のできる者が本当の戦上手であり、この時点の家康くんはあまりにもお粗末です。
 あっけらかんとした悪党って、やっぱり日本人向きじゃないのかなー・・・