人造国家イスラエル
読了。あー、辛かった・・・
パレスチナの民族浄化: イスラエル建国の暴力 (サピエンティア)
- 作者: イラン・パペ,田浪亜央江,早尾貴紀
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2017/10/27
- メディア: 単行本
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そもそもイスラエルという国が十九世紀末くらいから東欧のユダヤ人を中心に強まったシオニズムの思想からつくられたイデオロギー国家と言えるものであり、あー、嫌な予感しかねー・・・人間の考えに合わない環境を修正、歪曲しちゃうぞ、という奴。
二千年ほど前に追放されてしまったパレスチナの地に自分たちの国家を作ろうというのは、物凄い困難が伴います。その二千年間無人であった訳ではないし、旧約聖書が乳と蜜流れる地と書いているぐらいだから、住んでいない訳がない(日本人の目から見ると荒野だけど)。んでシオニストたちは簡単に考えました。「汚物は消毒だ」
ここでナチス・ドイツと異なり巧妙な点(というか非力だから巧妙に振る舞うしかなかった)、当時パレスチナを委任統治していたイギリスや、現代でもそうですがアメリカなど世界世論に影響力を持つ国に対してロビー活動を行い、自分たちが『正義』で『仕方なく』虐殺、追放、虐待行為を行う、行っているということを納得させてしまった。自分たちの国をゼロから立ち上げる為に仕方ないんだーって。
しかし仕方ないといいながらでも、着の身着のまま住んでいる土地を追われ、財産を強奪され、十歳から五十歳までの男子は殺されるか、収容所行き、女子供老人も追い立てられるか、特に女性はレイプの挙句に殺されるという最悪のシナリオまであるという・・・そんな事をされたパレスチナ人がユダヤ人を許せるハズがない。それも数十年間世論から故意に忘れされて、無視されるという事までされる。
確かに民族浄化は歴史の中でしばしば起こった事であり、現在でも世界の何処かで起こっています。よくある一コマとも言えますが、しかしイスラエルが滅ぼした村跡に植林を行ったのですが、その植相が現地のものではなく、東欧を模したもの、という記述を読んだ時、吐き気を覚えました。そして題名のような事を思いついた訳です。
つまりイスラエルを支えているのは観念、イデオロギーでしかないという事。現地の環境に溶け込み、影響し合い醸成するのではなく、自己と異なる存在を徹底的に抹殺し、自己拡張をしていく、というもの。これでは平和なんてこないし、要塞国家にならざるを得ない。あー荒廃した未来のディストピアチックですよねー。
案の定イスラエルはしっぺ返しを受けつつあるようです。そもそも東欧のユダヤ人の移民で構成するつもりでいたのが、ホロコーストで殺されてしまうか、もしくは西欧、アメリカに逃亡して、そこで生活が成り立ってしまったら中東にわざわざ移民する人は少数ですよね。そして先進国と同じように少子化が進んでいます。それを補完する為に中東やアフリカのユダヤ人の移民を受け付けますが、白人系ではない彼らへの差別で社会不安を産んでいます。もちろん国内に取り込んでしまったパレスチナ人も不満分子になります。国を成り立たせる為の国民総数を維持できない。その不安がますます彼らを要塞国家にしている様子です。
この状況を解消するには帰化を促進するしかないけれども、ユダヤ教徒で白人ぢゃないと嫌だーって、あーた・・・
この本を書いた方はユダヤ系イスラエル人ですが、活動を国外に移さざるを得ませんでした。つまりパレスチナ人との和解共存こそがイスラエルの生き残る道と思う人は少数派なんですよね。中東の平和は遠いなぁ・・・