明日からお盆休みです

 今年は四日間本業が休みです。何処かへ行くのかと言われれば、十四日の晩からでかけるコミケぐらいなものですが、休みの日は寝過ごす事ができるので助かります。ああ、インドア発言。
 昨日読み終わったもの。

日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 (新潮新書)

日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 (新潮新書)

 題名を見ると利権漁りをする人のような印象を与えるのですが、本文を読むと『融資した男』の方が合っているような気がします。
 日露戦争当時、『新興国アメリカの金融市場の動向を左右したドイツ系ユダヤ人で、当時ユダヤ人を迫害していた帝政ロシアと戦争する日本に接近。同盟を結び当事随一の経済大国ながらブーア戦争で資金的に苦しくなっていたイギリスから戦時公債を目標額の半額しか公募できなかった日本に対し、公債引き受けを申し入れ、結局戦争期間中日本の発行した公債の四割を引き受け、資金面で日本を支援した人の評伝と、戦争終結直後に日本を訪れた彼の旅行記の翻訳で構成されています。
 当事の日本人指導者が幕末海外に留学し、高等教育を受けた人が多く、その学友を基礎にイギリスやアメリカに対して人脈を持っていたことや、主人公であるシフ氏の支援を大変ありがたく思っていたこと。しかし講和条約で賠償金を獲得する事ができなかった日本が韓国や満洲を植民地支配する事で経済発展しようと考え、日本への投資を通じてアジア市場に参入しようとしていたアメリカとの思惑の違いが、太平洋戦争への伏線となっていきます。
 資金面で国を救ってくれた人物としてシフ氏を評価し、天皇、皇后が特別待遇をする一方、政治や経済が絡むと途端にからくなる。そして欧米と協力していかなければならないと考える長老たちと、血を流して獲得したものを独占しようとする若手や軍部の確執が透けて見えます。協力が過ぎると独立が骨抜きにされるし、あまりに強硬だと孤立し敗戦した歴史がある訳で、政治は難しいですネ。
 暗殺された当事の伊藤博文は人臣位を極め、逆に権威を失っている存在でしたが、韓国で英雄視されている安重根は暗殺する人を故意に間違えたようにも思います。伊藤はどちらかというと海外融和派で、彼を殺すという事は日韓の対立を煽る結果になり、その先に安重根は韓国の武装蜂起と祖国の独立をみたのでしょうかね。
 外国人から観た明治後期の日本の姿を見れて面白いです。当然ながら綺麗なところしか見ていません。最初は喜んでいた和食が続くと、うんざりなんて本音も読めます。
 面白いのは、国内でユダヤ人を迫害しながら戦費調達をシフに依頼する帝政ロシア。え?
 「奴のせいで戦争に負けた」と当事の財務大臣は言っていたそうですが、えーっと、それってどうよ?ユダヤ人に限らず民族的結束というのは侮れないもので、国内でいぢめている人々を同胞視している人を商売相手に選ぶというのも、おおらかすぎるよね。