雨です・・・

 だからという訳でもないけど、ようやく読めましたよ。ふいー。

ドイツ三十年戦争

ドイツ三十年戦争

 かなり大部な本です。つまり厚い。訳文もやや古風・・・ぐるりってなんだろう・・・あ、周囲とか周辺ってことか。
 しかし読みやすい文章です。英文フレーバーが読みにくいといえば読みにくいけど、かなり読みやすい本でした。
 ドイツ三十年戦争は、世界史的には最後の宗教戦争と言われ、最初の近代的条約といわれる「ウェストファリア条約」によって一応終結した、一言ではまとめづらい戦争でした。
 ヨーロッパ全体を俯瞰すれば、スペインとオーストリアの両ハプスブルグ家の覇権に、包囲される危機に陥ったブルボン家、宗教弾圧と重税を理由にスペインからの独立をもくろむネーデルランド(オランダ)、同じくオーストリア・ハプスブルグから分離しようとするプロテスタントボヘミアチェコ)、バルト海の覇権にドイツ・プロテスタント大義を絡めたデンマークスウェーデンの王たちが戦ったという図式です。
 ドイツに限ってみると、神聖ローマ帝国という連合体の現状維持を目論む選帝侯を始めとする諸侯たちに、スペインの財力と軍事力をよりどころに、カトリック復活を大義としてハプスブルグが絶対王政を確立しようとしたことが絡んできて、事が複雑になります。
 ついでにプロテスタントカトリックの宗教事情が存在する、と。
 しかしぶっちゃけてしまえば、大小さまざまな諸侯、王家が己の生存と覇権を巡って火花を散らし、ドイツという不安定な地域でグダグタの戦争を断続的に三十年間繰り広げたというところでしょうか?自らの存亡の際に、宗教も外国も遠い存在になる訳で、傑出した人物や組織が出現せず、明快な解決方法が謀られず、結局ドイツの分裂が決定的になったという事だけが残りました。国民国家出現前の出来事です。
 後年ドイツ人は、この戦争さえなければ・・・というらしいですが、しかしこれは必然的に起こらざるをえなかった戦争ですネ。中央集権と地方分権のせめぎあいはいつの時代でも存在します。そのバランスを取らないと国は成り立たない。中央集権が過ぎれば国は動脈硬化を起こし、地方分権が過ぎれば弱体化して外国からの圧力に抗し得なくなる。三十年戦争地方分権が行き過ぎて、ドイツが国民国家として成立するのが遅れる原因になった、というぐらいでしょうか?
 今でもドイツは『連邦共和国』のはずです。
 どちらにせよ、当時のドイツが一つにまとまることを、当のドイツ人たちすら求めていなかったという事ですネ。その点、ハプスブルグ家は運がなかったという事でしょうか。