あれから二十年以上
自分が大学生の頃、ちょうど映画館でアルバイトしていた時にかかっていました、『羊たちの沈黙』。たぶん自分が勤めていた期間で一番売れた映画ではないでしょうか?あの映画で自分はジュディ・フォスターという女優さんを、いいなっ、と思いましたね。
んで続編の『ハンニバル』はそのジュディ・フォスターがやりたくない、みたいな事を言っていて、なんでかなーっと原作小説を読んだら、ああ、確かにハンニバル・レクターが主人公で、彼女が演じたクラリス捜査官はどっちかというと「やられ役」みたいだからか。でも小説を読むと、一体どっちが勝者なのか?ってハンニバルが考えているシーンもあった気がします。映画は・・・なんか、違う、と思いました。
んでその後に若き日のハンニバル・レクターを描いたこれが出ました。
- 作者: トマスハリス,Thomas Harris,高見浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/03/28
- メディア: 文庫
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んで読み始めて・・・ああ、敬遠したはずだわ、と納得しました。映画化されていますけれども、この映画は、日本人にはなかなか受けないと思う。頑張っているけれども「なんちゃって」日本なので。
食人鬼であり、天才的な頭脳の持ち主がアンチ・キリスト的思考を持ちながら普遍的な美意識、美学を持っている理由として、日本文化に思春期に触れ、青年期の憧れの女性に日本人女性を配した、という話があるのですが・・・うーむ・・・頑張っているけれども、辛くいうと『もう少しです』って感じの違和感が。何処がどうというと説明しづらいのですが、女性に語らせるから『源氏物語』や小野小町を持ち出しているのでしょうけれども、美意識的には茶道や華道を用いた方が解りやすいし、文学としては『物語』よりも古今和歌集とかの和歌や、俳句の方が心情説明には良かったのではないかと思います。しかしこの小説を構想、準備する期間中に英訳されている日本古典で入手しやすいものは、やはり最古の小説とも言われている『源氏物語』になってしまうのでしょうね。
あと、映画で日本人女性『紫夫人』を演じているのが中国出身の女優さんて・・・あ、ごめん、になっちゃいますね、日本人としては。
原作者、すごく頑張っているんですよ?ものすごく勉強しているのが解る・・・でも・・・やっぱり・・・『もう少しです』になりますねぇ。
それ以外のシーン、ストーリーはハンニバルの愛情、悲劇、哀惜、そして変貌がとても興味深く、納得がいって、面白いです。
西洋的な考え方への対峙に日本文化を持っていきたい気持ちは解るけれど、なんかアプローチがずれている気配がするのですよね。日本人にも説明しきれない『天道』思想を持ってくると、しっくりきたかも知れません。そして日本人に説明しきれないものを欧米人か理解できるのか?って思うけどね(あ