武田勝頼を引きずっています。

 一応今日がハロウィン当日らしいですが、別にカボチャパイを食べる予定もないです。そもそも甘いものはお茶請けとして食べたい年ごろであります。
 あ、さて、昨日にも日記で書いた『武田氏滅亡』に絡んで、勝頼の事を考えています。最近、平山優という研究者の方の著作のせいか(というか『武田氏滅亡』も平山さんの著作物ですが)、勝頼に対する否定的な見方は減ってきているような気がします。
 江戸時代からの勝頼愚将説は黒澤明監督の『影武者』でも再生産された印象ですね。しかし一体どうすればいいというのか?優れた実績を持つ先代を引きずる宿老たちは、一歩間違えば老害になりかねない存在であり、当主の統率力を阻害する危険があります。
 しかし組織の主力の支持を得なければ組織を動かす事は出来ず、その意味で長篠の戦は勝頼にとって危機であると同時に好機でもありました。宿老勢が死亡した事は組織の危機ですが、自らの統率力を貫徹する事できる、という事でもあります。その後の勢力の持ち直しは、組織者として勝頼が優れていた証拠ではないかと思うのですよ。
 となると長篠の戦が決定的な敗亡原因ではないとすると、やはり敵とするもの、味方とする相手を失敗した、というべきでしょうか?上杉氏を同盟相手に選んだ事は地勢的には失敗でした。その為に武田領国は北以外は全て敵という状況になり、北条氏に対して優位に立つものの、主敵である織田・徳川に対して有効な反撃を取れなくなりました。結果の高天神城陥落であり、各地の国人領主を守備隊に配備しながら、救援する事が出来なかったのは致命的でした。
 戦国大名というのは現代でいうと、アメリカと同盟国の関係が似ていると思います。同盟国はアメリカの軍事力に庇護され、その外交方針を規定され、内政にも干渉を受ける場合がありますが、しかし独自の軍事力、外交権、内政権を持った独立国です。もし日本においてアメリカが有事の際救援してくれないならば、アメリカとの同盟は見直し、あるいは中国の軍事力に頼るという選択肢も発生してくるかもしれません。
 そういう風に考えると理解しやすいのかなぁ。そして戦国大名は配下に対して指揮権を持つ権利と、保護する義務が生ずるのだなぁ、と思ったりします。
 あとはですね、『三河物語』での信長が勝頼父子の首を前にして言った言葉がね、なんか、くるんですよ。
「日本に隠れなき弓取りなれ共、運が尽きさせ給ひて、かくならせ給ふ物かな」
 丁寧語でつぶやいているところに、ちょっときちゃいますね、はい。