まだまだ読書

 八月は購入した本も多かったので、それに図書館から借りた本もあるし、今回も読んだ本について二冊ほど書いてしまおうと。

魔境の二人組 (ハヤカワ文庫FT)

魔境の二人組 (ハヤカワ文庫FT)

 無頼な冒険者が主人公、でも盗賊ロイスがハーフエルフという素性がばれて、しかもハドリアンも旧帝国の近衛の生き残りか、もしくは皇帝の子孫か?みたいな匂いが漂ってきたので、なんとなーく『指輪物語王の帰還のようなラストが用意されている気配を感じております。
 敵役の教会が陰謀は達者だけど、妙に情けない役回りでございまして、うーむ、最後の敵は教会じゃないような気がする。
 まぁ、ゆっくり、しっかり刊行していって欲しいですよ。『氷と炎』シリーズみたいな訳語トラブルを起こさないでね。
李鴻章――東アジアの近代 (岩波新書)

李鴻章――東アジアの近代 (岩波新書)

 清朝末期の朝廷を支えた大立者。欧米勢力の強さ、そして日本の脅威を警鐘し西洋化を進めようとしたけれども、体制、社会の障壁は分厚く高く、結局財力で器だけ整えて張子の虎でも虎は虎、とやってみたけれど、日清戦争で張子である事がばれてしまって、日本に対処する為に頼んだロシアが、実は一番やばい相手であったと知ったのは後の祭り。中国は欧米、そして日本に利権を食い荒らされる事になってしまった、という。
 この人、大変日本の事を褒めています。同じような立場の国であるのに、一度戦争して負けると攘夷を捨てて開国に踏み切り、欧米に侵略されないようにと官民一丸として邁進する明治日本が、たぶん羨ましかったのでしょう。
 太平天国の乱からこっち、義勇軍である自分の軍閥におんぶに抱っこの清朝は、まったく危機感がないし、問題に直面しているのは彼の配下の人間か、地方総督たち。しかし旧来の価値観から離れられない官僚主流、そして官僚予備軍の者たちも、脅威を肌で感じていない分、議論を弄べるという。
 「人間とは見たい現実しか見えないものだ」というカエサルの言葉そのままに行動する人々を前に、彼には諦観しかなかったのかも知れません。
 ただ彼の場合、様々な責任者でもあるので諦観するだけでは済まされないという・・・ああ、政治家って大変だ。ま、賄賂を受け取るのは中国の風習であり、官僚の役得ですけどネ。